新型コロナウイルスにより、新幹線や特急列車などの中長距離列車は苦境に陥っている。こうした中、これまでは違反行為、迷惑行為として認められなかった鉄道の利用方法に新たな価値を見いだすなど、アフター・コロナに向けた試行錯誤が始まっている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
新型コロナの影響で
中長距離列車が苦境に
新型コロナウイルスによって大きな影響を受けている鉄道業界。その中でも特に厳しいのが新幹線や特急列車などの中長距離列車だ。
JR東日本の場合、2020年度の定期利用者の旅客運輸収入は対2019年度で26.9%減だったのに対し、定期外利用者では近距離が40.6%減、中長距離では72.4%減と、中長距離の落ち込みが激しい。
中長距離利用の減少は他の指標からも見て取れる。輸送人員を旅客運輸収入で割った1人当たりの利用単価を2020年度と2019年度で比較してみると、日光や鬼怒川方面に特急を運行する東武鉄道は、定期利用者は111円から113円と微増している(テレワークの実施により割引率の少ない短い期間の定期を購入するようになったため単価が増える)のに対し、定期外利用者は251円から229円に減少している。
箱根、江の島方面に特急を運行する小田急電鉄でも、定期利用者は101円から103円なのに対し、定期外利用者は240円から225円に減少。名阪間を中心に広大な特急ネットワークを持つ近畿日本鉄道も、定期利用者が139円から141円なのに対し、定期外利用者は429円から369円と1割以上も減少した。
単価が下がっているということは、利用者1人当たりが支払う運賃・料金が少なくなったこと、すなわち支払額の多かった中・長距離利用者が減少していることを意味する。観光客の多かった路線では、外出自粛により旅行需要が大きく減退していることが影響しているというわけだ。