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“ジョブズの遺言”を破ってまで発売した
「iPad mini」の勝算

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第219回】 2012年11月7日
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 まず、iPad miniの仕様をざっとおさらいすると、サイズは7型とは言うものの、正確には7.9インチと大きめだ。縦に細長いNexus 7に比べると横広で、スクリーンも3割ほど大きくなる。アップルは、これをかなり売りとして前面に押し出している。

 それを除くとiPad2に似ているが、小型だというのにWi-Fiモデル、携帯通信モデルのそれぞれでメモリー容量を16GBから64GBまで3種類ずつ、合計6モデルも発売したところには、幅広い消費者に手に取ってもらおうというアップルの意気込みが窺える。

 プロセッサーにはデュアルコアのA5チップを採用。カメラも前面、背面両方に搭載して、ビデオ会議の「フェイスタイム」ができる。Nexus 7やキンドルファイアの新型、キンドルファイアHDと同じく、ステレオスピーカーを盛り込み、小型ながらまあまあの音響が楽しめる。

 ただ、ディスプレイは、アップルが新型iPhoneや新型iPadで誇りにしてきたレティーナディスプレイは搭載していない。そのため、特にアップルファンにとっては画像の粗さが気になるかもしれない。

 そして何と言っても値段だが、これはアップルプライス止まりだ。一番安いモデルで329ドル、高いモデルは659ドル。価格の点では、200ドルを切るアマゾンやグーグルに闘いの挑みようもないといったところだ。

 iPad miniについては、アメリカでも評価が分かれている。あまりに期待が膨らんでいたために「がっかりした」といった感想から、「やっぱりアップルは正しい」といったものまで、幅広い。アマゾンは、iPad miniの発表後すぐにキンドルファイア HDの1日の売れ行きが過去最高をマークしたと発表したが、それも本当のことだろう。アップルの小型タブレットの発表を待っていたものの、蓋を開けてみたらキンドルファイアの方が断然お得だと判断した消費者も多いだろうからだ。

 さて、アップルはタブレットで楽しめる動画や電子書籍、音楽などでのコンテンツではかなり積極的にその数を揃えているものの、クラウドとの連携という点で見ると、今ひとつはっきりとした戦略が見えない。キンドルファイアを買うと、自動的にアマゾンのクラウドユーザーになってしまっているスムーズさには及びもしない。

 そんなこんなで、タブレット競争はこれからが勝負だ。アマゾンもグーグルも小型から始めて、今やアップルと同じ10インチも発表している。タブレットの王者だったアップルの地位は、すでに脅かされている。これからアップルが何をするかが、見ものだ。


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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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