一方では、世界有数のIT企業であるGoogle、Microsoft、IBM、AdobeのCEOはすべてインド人であり、他の産業でもトップや幹部がインド人という例は少なくない。Appleも、上級副社長の中にインド人を擁している。同国の優秀な人材確保のために、研究所やインターン施設を、インド国内に23校あるIIT(Indian Institutes of Technology、インド工科大学。GoogleのCEOなど多数のエリートを輩出する名門大学)の近くに建設するIT企業は多く、Appleも、バンガロールと並ぶテクノロジー拠点のハイデラバードに2500万ドルを投じ4500人規模のR&Dセンターを設立した。

SAP Labs IndiaのStartupStudio内部の様子SAP Labs IndiaのStartupStudio内部の様子 Photo by Kazutoshi Otani

 さらにAppleは、iPhone 12を製造する鴻海(ホンハイ)精密工業の工場も同国内で稼働させるなど、インドへの投資を加速させている。というのも、インドは、現時点ではまだ貧富の差が激しいものの、国民の過半数が25歳以下の若者であり、2023年には全人口で中国を抜く見込みだ。同時に、2020年代の後半には中間層の購買力がEUやアメリカ、中国を抜いて世界のトップに躍り出ると予想されており、市場としても非常に魅力的な地域となるためである。

モバイルファーストが当たり前

 実際に筆者がコロナ禍の前に3度ほど渡印した際に感心したのは、渡航前にネット経由でe-Visa(電子ビザ)を取得でき、入国時にパスポートに正式なスタンプがもらえる仕組みや、e-Visaの取得者には、現地の主要空港で一定の通話と通信料がチャージされたSIMカードが無料でもらえるという特典の存在、そして、訪れた企業からホテルに帰る際に担当者から「タクシーを呼びましょうか?」ではなく「Uber(あるいは、そのインド版のOla Cabs)を手配しましょうか?」と言われたことだったりした。

Uberに先んじて発想されたインドのライドシェア、Ola Cabsのアプリ。Uberに先んじて発想されたインドのライドシェア、Ola Cabsのアプリ Photo by Kazutoshi Otani