ムンバイの風景 Photo by Hardik Joshi on Unsplashムンバイの風景 Photo:Hardik Joshi on Unsplash

Google、Microsoft、IBM、Adobe……この4つの企業はすべてCEOがインド人である。さらに、AppleやIntelにも副社長など多数のインド人幹部がおり、今や“インドの強さ”はIT業界における世界的な共通認識になっている。日本ではまだ「インドがIT先進国」という認識の人は少ないのではないだろうか。しかし実際のインド社会は、ものすごいスピード感でIT化・デジタル化が進んでいる。モバイルファーストが徹底しており、キャッシュレス決済も日本よりも普及しているほどだ。(テクノロジーライター 大谷和利)

 最近、ニュースなどでインドの話題を目にすることが多い。残念ながら、それはインド株とも呼ばれる新型コロナウイルスの変異株絡みのもので、世界各国で問題視され、ネガティブな印象につながっている。

 しかし、本来のインドは、IT業界のトップ人材を数多く輩出しており、高齢化とは無縁な人口構成や国外からの投資増大などの要素も相まって、2020年代後半から2030年代にかけて市場としても、また世界企業の製造拠点としても大きな躍進が期待される国なのである。今回は、ここ数年にわたって筆者が目の当たりにしたインドの実情についてまとめてみた。

ステレオタイプや誤解も多いインドのイメージ

 インドについて、今でも「仏教」「ヨガ」「カレー」「ターバン」の国というようなイメージしか持ち合わせていないとすれば、それは大きな間違いだ。インドにおける仏教は、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教、シク(シーク)教に次ぐ5番目の宗教であり、信者は人口の1%にも満たない。バラモン教の修行としての本来のヨガもごく一部の人が実践するのみで、それ以外は他国と同じくエクササイズとしてのものが主流だ。また、日本人が考えるカレーという料理はなく、カレーに見える多彩な料理には、すべて固有の名前が付いている。そして、いわゆるターバンも、人口の2%以下というシク教徒の中でも特に教義に忠実な人しかまとっていない。