多くのビジネスにとって
重要な「W型」人材の育成

 プロダクトマネジャーの場合はπ型の専門性、縦軸に当たる部分を何本か持つモデルが適していると考えられてきましたが、先日我々が出版した『プロダクトマネジメントのすべて』の共著者である曽根原春樹さんは、「W型」というモデルを提唱しています。

 W型モデルは、Vの字が重なったような形から成ります。このモデルでは、さまざまな知識やスキルをある程度の深さまで持ちますが、「深く掘りすぎない」ことが特徴となっています。その代わり、ある程度の深さの知見や見識を複数持ったときにできる「交差領域」から生まれる新たな洞察を重視します。下の図ではVとVが重なった交点と、その下へ伸びる部分です。

 W型の人材育成モデルでは、この交点と交差領域を増やすことでスキル構成を図ります。

優秀なプロダクトマネジャーの条件、「W型人材」になるための秘訣

 人材モデルについて、I型が劣っているとか、W型が優れているということはなく、どの人材も企業にとっては重要な役割を担う存在です。それぞれの型の人材に求められることは異なるので、全員がπ型・W型人材を目指す必要はありません。

 ただしプロダクトマネジャーのように、さまざまな知識やスキルを広く持ち、かつ担当領域とその隣接領域の情報についてはステークホルダーと対話するため、ある程度の深さで知っている必要がある職種では、W型モデルを活用してスキルを伸ばすとよいでしょう。

 肩書に「プロダクトマネジャー」という名が付いていなくても、プロダクトマネジャーと同様に社会の課題に対して何らかの解決策を世の中に打ち出し、対象となるユーザーにいかに広げるかを考えるような職種では、W型モデルによる人材育成は有効です。

 たとえば編集者もそうです。対象となる読者に向けて、どのような企画を立て、どういうコンテンツを、どういうパッケージで提供すれば最も効果的に読者の課題を解決できるかを考えるのが編集者です。出版物やウェブメディアをプロダクトだと考えれば、プロダクトマネジャーと同じ仕事をしているといえます。

 以前、ある編集者に「A領域だけ、B領域だけで企画を考えても、すでにあまたあるコンテンツの中で埋もれてしまう。AとBの掛け合わせで希少性を考えるのだ」と聞いたことがあります。これはまさにW型の交差領域から伸びた新たな洞察を生かしたものです。

 同じように何らかのものづくり、企画に携わる職種の方やマネジメント職の方にも、このような考え方は有効だと思います。多くのビジネスパーソンにとって、今後ますますW型のビジネススキルの考え方は重要になっていくのではないでしょうか。