大企業,新規事業
なぜ大企業の新規事業は失敗しやすいのでしょうか Photo:PIXTA

10年、20年後の生き残りをかけ、大企業でも新規事業開発の動きが加速している。ただし、なかなかうまくいかない企業が少なくないのが実態だ。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏はこうした状況について、「新規事業開発やイノベーションの動きをわざと邪魔しようとする人はいない」という。それなのになぜ、大企業の新規事業開発は失敗しやすいのか、及川氏が解説する。

イノベーションの動きを
わざと邪魔しようとする人はいない

 大企業といえども、今や既存の技術や資産だけで成長を維持できる時代ではなくなりました。そこで変化に対応するために各社が取り組んでいるのが、新規事業の立ち上げです。ただ、大きな企業でこれまで成果を上げてきた人ほど新規事業を担当したときにはうまくいかず、中には事業の成長を阻害するケースもあるようです。

 日本では年功序列システムが浸透していることもあって、会社に長くいた経験者が要職に就くことが一般的に受け入れられています。年配者が要職に就くのは、過去に成し遂げた成果を評価されてのこと。つまり、長い期間、会社の業績に貢献してきたからの抜擢でしょう。

 企業の新しい取り組みにおいても、こうした方々が決裁者として事業にゴーサインを下す立場になることはよくある話です。それがなぜ、新規事業の成長を阻害する結果につながってしまうのでしょうか。

 事業においては一人が承認を行うわけではなく、課長から部長、事業部長、担当役員へといった具合に、下から上へ順番に承認が進む「決裁チェーン」のようなものが構成されることがよくあります。このとき、上の役職になればなるほど、言い換えれば、持っている経験が長ければ長くなるほど、現場から離れてからの時間も長くなりがちです。

 また、そうした要職にある人たちがかかわった時代に大きく成長した事業と、今求められている事業とでは性質が全く異なることも多々あります。そこで要職者が過去の経験から新規事業の是非を決裁しようとしたときに、結果として阻害要因になってしまうことがあるのです。

 新規事業の立ち上げを担う立場にありながら、それを意図的に邪魔しようとする人はいないはずです。しかし善かれと思っての判断であるにもかかわらず、「真面目な人が善意で下した判断」がイノベーションの芽を摘んでいるということは、往々にして起こり得ることなのです。