プロダクトマネジャーPhoto:PIXTA

プロダクトが単なる「製品」から「事業」へと移行している時代。成功するプロダクトには、必ず優秀な「プロダクトマネジャー」が必要だ。マイクロソフト、グーグルで製品開発、プロダクトマネジメント、エンジニアリングマネジメントに携わってきた及川卓也氏が、新時代のプロダクトづくりに欠かせない「プロダクトマネジャー」の役割、資質について解説する。

プロダクトはモノからコト、
「製品」から「事業」へ進化している

 プロダクトマネジャーという職種について、耳にする機会は日本でも増えているかと思います。プロダクトマネジャーは「プロダクトの成功に対して責任を持つ人」のこと。シリコンバレーをはじめとする米国のハイテク企業では、以前からプロダクトマネジャーという役割を置いていましたが、今ではハイテク企業に限らず、また米国以外の国でも認知されるようになり、多くのプロダクト開発を行う企業で重要な役割を担う職種となりました。背景には、プロダクトの性質が変わり、単なる製品から“事業”に近くなっていることが挙げられます。

 かつての「ものづくり」はプロダクト、すなわちソフトウエアやハードウエアなどの製品づくりに限定されていました。事業は、プロダクトの周辺を企画、営業やマーケティング、広報、顧客サポート、運用保守、サプライチェーンマネジメント(SCM)といった役割が取り巻く形で成り立っていました。しかし今ではプロダクトとその他の部分との垣根があいまいになり、業界によっては、プロダクトが事業とほとんど一体化するようになってきています。

 モノからコトへの流れの中、インターネットを通じてプロダクトを提供することが増えています。その結果、サービスデザインやデジタルマーケティング、グロースハック(利用者が利用するデータを分析してマーケティング課題を解決する手法)、カスタマーサクセスといったアプローチが、プロダクトの成長に欠かせなくなりました。

 リスティング広告やランディングページ制作、ユーザーの属性に応じたメッセージ訴求といった施策と、最終的に顧客となってもらうための一連の流れは、よりサイエンティフィックとなり、中にはそれらがプロダクトと一体化しているものも現れています。このためプロダクトづくりとマーケティング、営業といった、それぞれの活動の境目はあいまいとなり、一気通貫で取り組むケースも出てきました。仮に、それぞれの領域で別々に担当者がいたとしても、お互いの協力関係が必要となっています。