日中両国には「麺食い」がいる!
日本語には、「面食い」ならぬ、「麺食い」という表現がある。麺類が好きな人をいう。
近年、中国で有名になった麺食いの日本人もいる。2008年に『誰も知らない中国拉麺之路―日本ラーメンの源流を探る』(小学館101新書)を書いた坂本一敏氏だ。坂本氏は京都大学文学部卒業後、近畿日本ツーリストに入社。1974年に中国旅行担当となり、初訪中。90年から94年まで北京事務所長を務め、退職後には中国麺類文化研究所を設立。訪中は200回を超え、1000種類以上の中華麺を食したという。
坂本氏の中華麺追跡の旅の内容の一部を知った私は、その意欲と好奇心と目指したものを追い続ける精神力に圧倒され、最大限の敬意を払い、脱帽した。
私は米文化の上海出身だったが、文化大革命の時代、中学校を出たら、すぐに黒竜江省の農村に飛ばされ、数年間小麦の食文化圏で生活した。多感な少年時代だけに、この経歴は私の食生活に大きな影響を与えた。今も麺類を含む粉物が無性に好きなのはその影響だ。
2009年、仕事でシルクロードの町、甘粛省蘭州市を訪問した。蘭州といえば、蘭州牛肉麺だ。翌朝、私は、支払い済みのホテルの朝食(70元=約900円)を放棄して、7元(約90円)の蘭州牛肉麺を食べに行った。それくらい「麺食い」なのだ。