JAL再建をめぐって、日本でも経営不振企業に対する公的支援のガイドラインを作るべきだという議論が始まろうとしている。その参考とされているのがEUガイドラインだが、これはEUという統一市場を前提として設けられたもので、無条件に日本に導入するのには反対である。

日本でガイドライン導入が
議論される背景

とざき・はじめ
早稲田大学アジア研究機構教授。1963年大阪に生まれる。京都大学経済学部卒業。日本航空、帝京大学、明治大学を経て、2008年11月より現職。博士(経済学、京都大学)。主な著書に『航空産業とライフライン』(学文社)など

 2012年10月31日、パナソニックが2012年度上半期決算を発表すると同時に、2012年度通期の当期純利益の見通しを7650億円の赤字に引き下げた。この主要因は事業構造改革費の計上と繰延税金資産の取り崩しではあるものの、2期連続の巨額赤字である。また、2011年度の当期純利益が3760億円の赤字だったシャープも、2012年度通期の当期純利益の見通しを4500億円の赤字に下方修正した。

 このように日本を代表する電機メーカーが、「本業の不振」と「財務の脆弱性」のダブルパンチにより、極度の経営不振に陥っている。一方、同じく経営不振にあえぐ半導体大手ルネサスエレクトロニクスについては、経済産業省が音頭を取る形で、公的ファンドである産業革新機構と株主3社(NEC/日立製作所/三菱電機)・主要取引先の官民共同で計2000億円の出資を計画し、公的支援を行う形での再建に向けて、11月中の合意を目指していると報道されている。

 このようにグローバル競争の激化にあわせて経営不振企業が増えると同時に、企業再生・業界再編を目的とする公的資金を持った機構が数多く設立され、今後の公的支援事例増加が見込まれる。ただし、公的支援の目的は、その企業がなくなれば国民利便の毀損が大きいと想定される場合に、その毀損を極小化することであるものの、「支援企業選定の公平性」や「公平公正な競争環境」の維持という難しい命題を抱える。