世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

これから自動車が売れる国、売れない国を「データ」で先読み!Photo: Adobe Stock

これから自動車が売れる国、売れない国とは?

 OICA(国際自動車工業連合会)によれば、2017年の世界の自動車保有台数は、アメリカ、中国、日本、ロシア、ドイツ、インド、イタリア、ブラジル、メキシコ、イギリスが上位国です。

 この中で近年増加傾向にあるのが、「中国、インド、ブラジル」です。近年の経済成長によって生活水準が向上し、自動車購買層が拡大しています。

 この3ヵ国を2005年と比較すると、中国6.8倍、インド4.5倍、ブラジル1.9倍とそれぞれ増加しています。

 また11~20位には、インドネシア(2.6倍)、タイ(1.9倍)、マレーシア(2倍)といった国が登場しており、これらの国も自動車保有台数が高い水準で増加しています。

「人口100人当たりの保有台数」に注目!

 さて、自動車保有台数上位10ヵ国の「人口100人当たりの自動車保有台数」を見てみましょう。

・アメリカ:84.9台
・中国:14.7台
・日本:61.2台
・ロシア:36.4台
・ドイツ:60.6台
・インド:3.5台
・イタリア:71.9台
・ブラジル:21台
・メキシコ:33.1台
・イギリス:59.5台

 先進国の多くで50台を上回りますが、近年頭打ちになっていることから、自動車市場は飽和状態にあるといえるでしょう。

 しかし、中国やインド、ロシア、ブラジル、メキシコなどは人口大国でありながら、人口100人当たりの保有台数が低く、自動車市場はまだ飽和していないと言えるでしょう。魅力的な市場として、今後の動向に注目したいところです。

 これはインドネシア(8.9台)、タイ(24.5台)、マレーシア(46.2台)も同様です。しかし、急激な自動車の普及に対して、それを支える社会資本の整備が追いつかない可能性もあります。

電気自動車はどうなる?

 近年は電気自動車の普及も進んでいます。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で乗用車の販売台数が15%減少すると試算されている中で、電気自動車の販売台数は2019年とほぼ同水準を維持するだろうといわれています。

 2019年の電気自動車保有台数の世界最大は中国(335万台)です。以下、アメリカ(145万台)、ノルウェー(33万台)、日本(29万台)、イギリス(26万台)、ドイツ(26万台)と続きます。特にノルウェーは人口が537万人であるにもかかわらず、33万台の電気自動車が稼働しており、世界で最も普及している国といえます。

(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)