世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
著者は「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

日本は世界5位の「再生可能エネルギー」大国! 強みと弱みを分析!Photo: Adobe Stock

実はすごい! 日本の再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーとは、自然エネルギーやバイオマスなど、自然界に常に存在するエネルギーのことです。環境負荷が小さく、枯渇の心配がなく、また二酸化炭素の排出がないという特徴があります。

 一方で、「大きな設備が必要であること」「天候などに左右されるため供給が不安定で、需要に合わせて発電できないこと」「発電コストが割高であること」などの短所ももちあわせています。

 日本における再生可能エネルギーは法的に種類が規定されており、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱・その他の自然界に存在する熱、バイオマスの7つです。この中でも水力発電量は単独で統計に示されることが多く、再生可能エネルギー統計に含まれないことがあります。

 EIA(アメリカ合衆国エネルギー情報局)の統計によると、日本の再生可能エネルギー(水力発電は含まない)による発電量は中国、アメリカ、ドイツ、インドについで世界第5位です(2018年)。

 総発電量に占める割合は約14%であり、なかでも「太陽光発電」比率が6.36%と最も高く、次いで「バイオマス・廃棄物発電」比率が4.49%となっています。

日本で太陽光発電が普及した理由

 日本で太陽光発電の普及が進んだのは国の政策が大きいと考えられます。ソーラーシステム普及促進融資制度(1980~1996年)やFIT(固定価格買取制度・2012年~)の2つが大きいです。

 かつて日本には、1973年の第一次オイルショックをきっかけに新エネルギーの技術研究開発を進める「サンシャイン計画」(1974~2000年)がありました。

 サンシャイン計画が始まった当初、太陽電池の製造コストは1w当たり数万円もかかっていましたが、現在では数百円程度。こうして太陽電池の技術がコモディティ化していき、2012年に固定価格買取制度が始まると、太陽光発電の普及が一気に進みました。

 日本の太陽光発電量(TWh)は、2011年は4.84でしたが、2012年には6.61、2018年には62.67となっています。

 太陽光発電を行うには日照時間が長いほうが有利です。そのため、日本海側のように冬に大陸からのモンスーンの影響を受けて降水量が多くなる地域や日本列島北部は太陽光発電を行うには不利な地域です。

 結果、日本の太陽光発電量は太平洋側の県で多くなっています。また山梨県や長野県、群馬県といった内陸で年降水量が少ない県でも多くなっています。

 日本は化石燃料に乏しい国です。石油や石炭、天然ガスといったエネルギー資源の安定供給、原子力発電の積極的な開発と運用を進めてきました。しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに、原子力発電事業は見直しを迫られ、再生可能エネルギーが期待されるようになりました。