某大手金融機関に勤めていた著者は、40歳で早期リタイアを考え始め、2019年に資産1億円を達成。51歳で早期リタイアを実現した。初の著書『【エル式】 米国株投資で1億円』では、FIRE(経済的自立と早期退職)の原動力となった米国株投資術を全公開。基礎の基礎から、年代・目的別の投資指南、最強の投資先10銘柄に至るまで、“初心者以上マニア未満”の全個人投資家に即役立つ米国株投資を徹底指南する。
米国株投資の基礎知識をわかりやすく伝えるため、Q&A形式で基礎の基礎からお伝えします。
Q これからは米国株より中国株じゃないですか?
A GDPではアメリカに迫っていますが、株式はまだ米国株に勝てません。
GDP(国内総生産)で日本を抜いて、世界第2位の経済大国になった中国。
2019年の名目GDPSBI(生産数量に単純に市場価格をかけたもの)は、1位のアメリカが21.43兆米ドル、2位の中国は14.73兆米ドル。
中国は経済力でも軍事力でも世界第1位のアメリカを猛追しており、米中は貿易や領土問題など、さまざまな点でしのぎを削っています。
中国のGDPはいずれアメリカを抜いて世界一になるという予測もあります。
将来的に中国がアメリカのGDPを抜き去るとしても、少なくともこの先20年くらいの中期的スパンにおいては、中国株が米国株にとって変わり、世界の株式投資の主役に躍り出るとは思いません。
米中の株式投資を巡る現状を整理しておきましょう。
アメリカは世界の株式の時価総額約98兆7000億米ドルの41.3%を占めて断トツのトップ。2位が中国で10.5%、3位が日本で6.9%となっています。
名目GDPでは、中国はアメリカの70%程度まで成長していますが、株式の時価総額では4分の1ほどに留まっているのです。
次に、MSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が提供する世界の株式を対象とした指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」(MSCI ACWI)の国別構成比に注目してみましょう。
このインデックスは世界中の株式に投資しており、世界の株式の時価総額で約85%をカバーしていることから、世界株式のベンチマークとして盛んに用いられています。
そのMSCI ACWIを国別にみると、アメリカが57.74%と6割ほどを占めています。
2位は日本で6.88%、3位が中国で5.16%となっています。
世界の株式市場における評価からすると、中国株は米国株の敵ではなく、日本株にすら勝てないのが現状なのです。
中国には「カントリーリスク」もあります。すでに触れたように、カントリーリスクとは、特定の国の政治・経済・社会環境などの変化により、投資した資産に損失が出ることをいいます。
アルゼンチン、ロシア、ギリシャなどのように、対外債務不履行(デフォルト)を宣言して国家経済が破綻すると、投資家は大きな損失を負ってしまいます。
どんな国にも、カントリーリスクはあります。
しかし、中国のカントリーリスクは「チャイナリスク」と呼ばれており、アメリカを大きく上回ります。
チャイナリスクには、株式市場の不透明性と信頼性の低さ、法支配の不明瞭さ、知的財産保護が不十分なこと、ナショナリズムによる周辺国との軋轢などがあります。
中国は世界第2位の経済大国であり、AIや5G、量子コンピュータ、宇宙開発などの分野で世界をリードしていています。
その未来にかけて投資する人もいますが、私には米国株を差し置いて中国株に投資する理由は、いまのところありません。
念のために付記すると、楽天証券、マネックス証券、SBI証券でも中国株を買うことはできます。