「スマホが頭を悪くする」と断言できる科学的な理由とは写真はイメージです Photo:PIXTA

文字通り朝起きてから寝るまで、大人も子どももスマホに夢中だ。スマホの目覚ましで起き、スマホでニュースを読み、メールをチェックし、通勤中もスマホを手放さず、休憩時間もスマホでゲームをしたりSNSをチェックしたり、こんなデバイスはこれまでなかった。これまでゲーム脳やテレビ中毒など新しいデバイスやデジタルサービスが生まれるたびに、批判的な言説が流れ、それを科学が否定するという繰り返しだった。スマホに感じる不気味さもこれまでの言説と同様に、新しい技術に対するアレルギーでしかないのだろうか。(サイエンスライター 川口友万)

スマホを使うと
記憶力が低下する

 スマホを巡っては、スマホの使い過ぎが脳に負荷をかけ、記憶障害や判断力の低下、集中力の低下を引き起こすと言われている。

「5分間のスマホ利用で記憶に重大な障害(Mobile phone use for 5 minutes can cause significant memory impairment in humans)」(Hell J Nucl Med. Sep-Dec 2017;20 Suppl:146-154 Kalafatakis Fほか)という衝撃的な論文がある。

 健常者64人と軽度認知障害者20人を実験群、健常者36人を対照群として次の実験を行った。

 実験群に対しては、最初に10個の単語を見せ、それを思い出しながら書き出してもらうテストを行う。

 それを(1)スマホを使う前、(2)スマホを5分間使った直後、(3)スマホを5分間使ってから5分後――という3パターンでスコアを比較する。

 一方、対照群はスマホを使わず、実験群と同じ時間間隔でテストを行った。

 その結果、実験群ではスマホを使った直後の健常者のスコアがもっとも低く、3回目の測定(2回目の測定から5分後)はスマホを使った直後よりもスコアは良かったが、スマホを使う前のスコアよりも下だった。

 反対にスマホを使わなかった対照群は1回目、2回目、3回目とテストの度にだんだんとスコアが上昇、すべて実験群を上回った。またスマホを使った60~80歳の老齢者は、若い年齢層に比べてスコアの低下が大きかった。

 なぜ、このようなことが起きたのか?