特別広告企画 従業員体験(EX)の向上

コロナ禍も2年目に入り、リモートワークが普及した。その中で浮かび上がっているのが、出社する人と在宅勤務の人を並行してマネジメントする難しさであり、あるときは出社、あるときは在宅で働く従業員のエンゲージメントをどうやって維持・向上させるかという課題だ。

企業や労働者の多様なデータを用いた定量的な研究を続ける慶應義塾大学の山本勲教授に、職場勤務とリモートワークのハイブリッド化が進む中での、従業員エンゲージメントの高め方について聞いた。

エンゲージメントは、「熱意」「活力」「没頭」の3要素で決まる

――最初に、従業員体験や従業員エンゲージメントが重視されるようになった背景について教えてください。

山本 かつて企業で働く従業員の目標といえば、出世や昇給といった非常にシンプルなものでした。知名度のある企業ならば、従業員の働きぶりを適正に評価して、ポストを与え、給与を上げていれば、従業員の満足度は上がり、人も自然に集まって来ました。

 従業員エンゲージメントが高い状態とは、企業と従業員の目標や利害がうまくマッチングしている状態と言えます。従来は企業側が苦労しなくても、昇格・昇給によって良いマッチングを実現できていたのですが、近年は人材や価値観の多様化が進み、マッチングが格段に難しくなっています。

 ジェンダー、年齢、国籍はもちろん、非正規雇用や契約社員など契約形態の違いがあり、さらに個々の価値観も異なってきています。例えば、仕事よりもプライベートや余暇を大事にしたい、自分が成長できる職場を重視するなど、人によって企業に求めるものは違っています。また同じ人であってもライフイベントによって価値観が変わることがあります。従業員は何を重視して企業を選んでいるのかが、企業には分かりにくくなっているのです。

出社か、在宅か。「どこでも職場」化が進む今、従業員エンゲージメントを高める3つの要素山本勲(やまもと・いさむ)
慶應義塾大学商学部教授
パネルデータ設計・解析センター長

慶應義塾大学商学部卒業、米ブラウン大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。日本銀行調査統計局、同金融研究所などを経て現職。専門領域は応用ミクロ経済学。労働市場を分析対象として、労働時間や賃金、雇用形態、ワークライフバランス、ダイバーシティ、メンタルヘルス、人材マネジメント、技術革新などのテーマについて、企業や労働者の多様なデータを用いた定量的な検証を実施。主著に『労働時間の経済分析』(日本経済新聞出版社、共著)、『人工知能と経済』(勁草書房、編著)、『実証分析のための計量経済学』(中央経済社)、『多様化する日本人の働き方――非正規・女性・高齢者の活躍の場を探る』(慶應義塾大学出版会、編者)など。

 そこで、一人ひとりの状態をサーベイして、その人の目的や価値観と現在の状態を照らし合わせて、マッチングがうまくいっているかをチェックする企業が増えています。

――従業員エンゲージメントのほかにワークエンゲージメントという概念もありますが、違いはなんでしょうか。

山本 従業員エンゲージメントは主に企業と従業員の関係に着目したものです。ワークエンゲージメントは学術的な概念として用いられることが多く、もう少し広く、仕事と個人の良い関係を研究対象としています。

 ワークエンゲージメントは、「熱意」「活力」「没頭」という3つの要素で決まります。仕事の要求度・資源(Job Demand Resource)モデルでは、仕事の「要求度」と「資源」がワークエンゲージメントを左右すると説明しています。仕事のプレッシャーや精神的負担が大きい、労働時間が長いなど「要求度」が高いと、エンゲージメントは下がります。「資源」とは、上司や同僚のサポートとフィードバック、仕事のパフォーマンスを高めるツールやテクノロジー、個人のスキルや裁量、自己効力感などで、使える資源が多いほどエンゲージメントは上がります。

 もともとワークエンゲージメント研究は、産業保健の分野で進んでいて、メンタルヘルスの悪化に対処するだけでなく、人が活き活きと働けているかどうかに焦点を当て、健康状態やメンタルヘルスがよい状態なら、従業員満足度や生産性が上がるという、ポジティブな面が取り上げられるようになりました。