働き方の柔軟性は確実にエンゲージメントを左右する

――コラボレーションや創造性につながるという意味では一緒に働く時間も必要で、今後はオフィスワークとリモートワークのハイブリッド化が進むとの見方があります。

山本 例えば、会議室にオンサイトで何人かいて、他の人はリモートで参加するという形だとやはり温度差があって、コミュニケーションがしづらいことは否めません。定例会議だけは全員対面といった選択肢もあっていいと思います。偶発的な交流や会話から新しいアイデア、新規プロジェクトが生まれることもあるので、人が集まることには大きな意味があります。

 とはいえ、リモートワークが日常化したことで、働く場所や時間を柔軟に選べることが分かってしまったので、束縛を嫌う人も増えているはずです。一同に会する機会と個人の働き方の柔軟性との兼ね合いが課題になるでしょう。

 一方で、なかにはリモートワークはあまり進んでおらず、対面前提の働き方に戻す企業もあります。働き方の柔軟性は確実に従業員エンゲージメントを左右しますから、企業はその点をよく心得ておいたほうがいいでしょう。

――日本でも働き方のハイブリッド化が進むと仮定した場合、エンゲージメントを維持・向上するために企業が求められることは何でしょうか。

山本 例えば、ジョブ型雇用が一般的な米国などでは、個人の業務領域や責任範囲がはっきりしていて、仕事の成果で評価されるので、リモートでも人材マネジメントがしやすい。一方、多くの日本企業では業務領域や責任範囲があいまいで自己裁量も少ないので、ハイブリッド化を進めるためには、そうした問題もクリアする必要があるでしょうね。

 もう一つは、テクノロジーの活用です。小さな組織ならエンゲージメントに問題があるかどうかは顔を見ればわかりますから、おかしいと思ったらすぐにアクションを起こすことができます。

 組織が大きくなるとアナログで全て対応することはできませんから、ハイブリッド化を含めて柔軟な働き方ができるテクノロジーやデジタルツールの整備、柔軟な働き方を前提とした上司や同僚のサポートなど、先ほど申し上げた「資源」を増やすことが、エンゲージメント向上につながります。

 みんながデジタルツールを使って働くようになると、自ずとデータが蓄積されていきますから、人材マネジメントにおけるデータ活用もしやすくなるはずです。もちろん、プライバシーの問題については従業員とよく協議して理解を得た上での話ですが、勤怠情報やエンゲージメントサーベイ、上司と部下の面談記録など人事関連のさまざまなデータをエンゲージメント向上に役立てていくことは、大きな組織ほど必要になってくると思います。

――どうもありがとうございました。