女性だけが持つ
「クリトリス」の存在意義とは?

 私は一応、女性の体の一般的な部分については名前も役割も知っているつもりだが、一点だけ、クリトリスの役割についてはよく分からない。村瀬氏に尋ねると、「クリトリスは性感帯です。そもそも性器のもとは男女同じもの。妊娠6週目くらいまでは男女の違いはなく、12週目頃から男性の場合は精巣上体や精管、精嚢ができ、女性は卵管や子宮、内性器が形成され、16週目頃からは、男性はペニスや陰嚢(いんのう)の形成が始まり、女性は大陰唇、小陰唇、クリトリス(陰茎)などの形成が進みます。つまり、女性のクリトリスは男性のペニスにあたるのです」と説明する。

 ペニスは、海綿体というふわふわのスポンジのようなものでできており、そこに血液が集まると硬くなり、勃起するが、女性のクリトリスも海綿体でできているという。クリトリスにも亀頭があり、男性の陰嚢は、女性の大陰唇にあたり、ペニスの茎部は、女性の小陰唇。前立腺の下の方にあり、男性が性的興奮を感じたときにアルカリ性の液を分泌する男性のカウパー腺は、性行為を滑らかにする粘液を分泌する役割を持つ女性のバルトリン腺にあたるというのだ。

 村瀬氏に紹介された本、スウェーデンのリーヴ・ストロームクヴィストによる『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』(花伝社)によれば、これまで1cm足らずだと考えられてきたクリトリスが、1998年には、全長7〜10cmで、2本の根と膣の両側を包み込む2つの海綿体球を備えており、女性の性的興奮によってこれらの器官全体が膨張するということが、オーストラリアのヘレン・オコンネル医師により研究発表されたが、「いまだに女性性器にクリトリスを明示せず、その存在と役割について記述していない性関連の医学書や教科書がある」と指摘している。

「現在も女性の性に対し、その快楽や快楽性を隠蔽(いんぺい)する傾向が根強くあることは、人間の性のあり方を学ぶ上で、大きな課題といえるでしょう」と、村瀬氏は話す。

 クリトリスは、性感帯以外の何ものでもないことが分かった。だからこそ、多くの国の医学書や教科書が、クリトリスの存在と役割に目をそむけてきた。その理由には、これまで長い間、女性が男性の存在抜きで性的快感を味わうことが肯定されず、むしろ卑しいことと否定されてきた歴史がある。

 次回もみなさんとともに、大人にも子どもにも有益な「性」について学んでいきたいと思う。