大久保利通の「やばい」一面:
盛れた写真を自慢して、西郷隆盛に「お気の毒」と言われる
大久保利通の有名な写真は、洋服を着て立派なヒゲをたくわえた明治期のもの。
これは明治政府がお手本としていたドイツの当時の首相・ビスマルクをマネたスタイルといわれています。
欧米視察中、利通は現地で撮った自分の写真を西郷隆盛に送りました。利通としては「西洋人に負けてなくない?」という自慢だったのかもしれませんが、それを見た隆盛からの返事は「みっともなさの極みです。もう写真はおやめください。まことにお気の毒千万でございます」という氷のように冷たいものでした。
隆盛は大の写真ぎらいで、西洋人のマネをして浮かれている親友を情けなく思ったのでしょう。
誤解されていた大久保利通
でも、長身でイケメンの利通は写真が気に入ったのか、その後も撮りつづけています。隆盛の死から8か月後、利通は馬車での通勤中に突然、不平士族に襲われて殺されてしまいます。
そのとき利通は馬車の中で、亡き隆盛からの手紙を読み返していたといわれています。「私欲のために隆盛を殺した」と思われ暗殺された利通ですが、じつはかれのモットーは「私欲のない政治」で、政府予算がつかない公共事業に自分のお金を使っていたので貯金はなく、借金だらけでした。
(本原稿は『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』(本郷和人監修)からの抜粋です)
東京大学史料編纂所教授。東京都出身。東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。大河ドラマ『平清盛』など、ドラマ、アニメ、漫画の時代考証にも携わっている。おもな著書に『新・中世王権論』『日本史のツボ』(ともに文藝春秋)、『戦いの日本史』(KADOKAWA)、『戦国武将の明暗』(新潮社)など。