東京外かく環状道路(外環)プロジェクトのトンネル工事が中断して約9カ月。ゼネコンやインフラ業界は工事再開の行方を固唾をのんで見守っている。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

外環トンネル工事の再開を願う
ゼネコン業界の2つの深い事情

 7月上旬、東京外かく環状道路(外環)プロジェクトの工事の一部でシールドマシン(トンネル掘削機)を動かすという一報がゼネコン関係者たちの間を駆け巡った。

 外環トンネル工事は、国土交通省と東日本高速道路(NEXCO東日本)、中日本高速道路(NEXCO中日本)が進める高速道路の工事。対象となる区間は関越自動車道と東名高速道路間の約16キロメートルだ。地下40メートルよりも深い大深度地下での工事が広範囲で含まれている。

 工事は現在、中断している。2020年10月に東京都調布市の住宅街の一角で地表面が陥没しているのが見つかったのがきっかけとなり、調査によってさらに地中3カ所に空洞が発見された。全て埋め戻しや充填は完了したものの、工事は再開されていない。

 陥没付近の大深度地下では、NEXCO東日本による発注の下で、大手ゼネコンの鹿島をスポンサー(幹事会社)とする共同企業体(JV)が施工を担当している。

 プロジェクトの本線トンネル工事は全4工区に分かれている。鹿島JVの他に大林組、清水建設、大成建設をそれぞれスポンサーとするJVがあり、サブとして準大手や中堅ゼネコンが合計16社参加している。

 冒頭の掘削機を動かすのは大成JVだ。本線と連絡路トンネルで止まっている2機を最大145メートル前進させる。期間は7月16日から12月ごろまでを予定している。大成関係者は稼働の目的を「機械が壊れないようにするため」と説明する。

 他の掘削機も含め、これまでも定期的にメンテナンスを行ってきた。地中で停止している位置は動かさずに機械を空回しする必要があった。しかし、今回は停止位置を変えるための前進であり、地中での移動だ。

 前回の停止は、陥没の発見を受けて緊急で行ったため、停止位置として最適ではなかった。そのため、掘削機に負荷がかからない位置に停止し直す必要がある。

 前進地点の直上が住宅街であれば、住民から反対されかねないが、今回はNEXCO東日本が所有する土地の範囲内。周辺住民に周知することで、稼働しやすい立地になっている。

 ゼネコン業界では、こうした機械維持の動きの延長上に工事再開が決まってほしいと願う者が少なくない。インフラを担う他業界からの関心度も高い。