新型コロナウイルスに関するニュースでは、「感染者数が指数関数的に増加している」といった表現や、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」などといった言葉がよく使われる。そうした言葉の背景には、「数式」が存在する。コロナの件に限らず、現代社会の至るところに浸透している数学。いくらAI技術が発達しても、人間が数学を知らなければAIに読ませるデータも選べない。今回は「指数関数」について分かりやすく解説する。
※本稿は、冨島佑允著『数学独習法』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。
コロナ禍でよく聞く
「指数関数」をドラえもんで解説
関数にはいくつもの種類があります。ここでは「指数関数」について解説します。
私たちが世の中の急激な変化に直面したとき、その背後に指数関数が隠れているケースが非常に多いのです。コロナ禍やシンギュラリティ(技術的特異点)など、変化のスピードが非常に速い出来事の核心には、指数関数があります。指数関数は、いわば人類を翻弄する“スピード狂”のような存在です。
指数関数がどんなものか、より詳しく見ていきましょう。
指数関数は、「掛け算」を深く追究することで生み出された関数です。理解のための前段階として、ドラえもんのひみつ道具「バイバイン」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第17巻、第1話)に登場してもらいましょう。バイバインは液体状の薬品で、何かに振りかけると、それが5分ごとに2倍の数に増えていくというものです。のび太君は、栗まんじゅうを食べてもなくならないようにできないかとドラえもんに相談し、バイバインを出してもらって栗まんじゅうに振りかけました。すると、栗まんじゅうが増えていくので最初は喜んだのですが、途中から食べきれなくなってごみ箱に捨ててしまいます。それを知ったドラえもんは大慌てになりました。なぜ慌てたのでしょうか?
具体的に、栗まんじゅうがどれくらいの勢いで増えていくか見てみましょう。