耕作放棄地は1990年の24.4万でしたが、2015年には42.3万haと大幅に増加しました。この42.3万haという数値は、富山県の面積とほぼ同等です。

 また新規就農者の約半分は60歳以上で占められ、農業従事者の65歳以上の人口割合はおよそ70%。農業労働者の中核が高齢者であることは間違いありません。

 こうした農業における「人手不足」「高齢化」、ひいては「生産の停滞」といった状況下において、効率化と生産性の向上を実現するためにはスマート農業が必要不可欠といえます。将来的に、米の需要に生産が追いつかなくなる可能性は大いにあり得るのです。

スマート農業で何が変わるのか?

 農林水産省はスマート農業の推進で「超省力・大規模生産を実現」「作物の能力を最大限に発揮」「きつい作業、危険な作業から解放」「誰もが取り組みやすい農業を実現」「消費者・実需者に安心と信頼を提供」を新しい農業のあり方として提示しています。

 ドローンを利用することで作物の生育状況を把握し、害虫や病気の検出なども可能になるでしょう。適切な範囲への農薬散布や、農地の分析などもあげられます。

 これまでのアメリカ合衆国の大農法のように、広大な土地に飛行機を活用して肥料や農薬を大量に散布するといった「力技」ではなく、個々の農作物に最適化した生育環境を与えることが可能となりました。

 さらに衛星写真などの宇宙データと人工知能を用いることで、耕作地に適している未使用の土地の発見など、さらなる効率化を図ることが期待されています。今後は「宇宙から地球を覗く」ような農業が展開されていくでしょう。そして、そこで生産された農作物によってわれわれの食生活が豊かになっていくのです。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)