世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

土地も資源もない日本がとるべき「サバイバル戦略」とは?Photo: Adobe Stock

資源小国、日本の生存戦略とは?

 世界に存在する土地と資源には限りがあります。人口増加や経済発展にしたがって増えることはありません。だからこそ争奪戦が繰り広げられるのです。

 日本は資源小国であり、自給できると考えられるのは硫黄と石灰くらいです。これだけで工業製品を作るのは不可能です。そのため鉄鉱石や石炭、石油、天然ガスなどの原燃料をほぼ輸入でまかなっています。

 鉄鉱石はオーストラリアやブラジル。

 石炭はオーストラリアやインドネシア、カナダ。

 石油はサウジアラビアやアラブ首長国連邦、クウェート、カタールといった中東の産油国。

 天然ガスはオーストラリアやマレーシアなどからそれぞれ輸入しています。これらの国々と良好な関係を保つのは必須といえます。

 加えて、中東諸国と日本を結ぶルート上には東南アジアが位置しているため、日本は東南アジア諸国とも良好な関係を築く必要があります。

 もっとも、資源輸出国は輸出余力が大きいから輸出が可能なのであって、今後の経済発展によって国内需要が高まり、輸出余力が小さくなる可能性も考えられます。

 また中国やインドといった人口大国の経済発展により、両国の原燃料需要が高まると、世界市場での資源争奪戦が激しくなり、原燃料の調達が容易ではなくなります。中東情勢とは関係のないところで「オイルショック」が起きることも十分に考えられるのです。

 日本は森林面積の割合が68.5%と高く、森林資源が豊富に存在しますが、日本列島のおよそ7割が山地や丘陵地(きゅうりょうち)であるため、森林を伐採し、それを運搬するのが物理的に困難です。

 そのためカナダやアメリカ合衆国、ロシアなどから多くの森林資源を輸入しています。また年降水量がおよそ1800㎜と多く、水資源に恵まれますが、山地や丘陵地が多いため、雨水が短時間で海に流れ出てしまいます。そのため適宜ダムを造ることで水資源を確保し、河川の流量を調節することで大雨に対応しています。

 資源は、国のおかれた自然環境によっても利用可能な量が変化します。「地の利」を活かせる国があれば、恵まれない国もあります。

 限りある資源の調達には、こうした「背景」を熟知することが欠かせません。これは現在だけの話ではなく、過去においても、そして未来においても変わりません。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)