世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。
日本の農業を「数字」で見ると?
近年、農業分野において、IoT(Internet of Things)やビッグデータ、人工知能(AI)の活用が注目を集めています。これはスマート農業(スマートアグリ)と呼ばれ、「第四次産業革命」に位置づけられています。
家電製品や自動車などの「モノ」が直接インターネットに接続され、ビッグデータと呼ばれる大量のデータがセンターに集められ、それが人工知能によって分析されます。
それまでは画一的なサービスの提供だったのに対し、ビッグデータの分析によって、個人に最適化されたサービスの提供が可能となりました。
第四次産業革命が農業に与える可能性として、「ロボット化された超省力農業」「ビッグデータの解析によって最適な栽培管理方法の提示やリスクの予測」「ノウハウの共有」「生産・流通・販売の効率化」などがあげられます。
日本農業のリアル
近年、日本経済で叫ばれているのが「労働者不足」です。総務省統計局によると2020年の日本の年齢別人口構成の割合は、幼年人口割合11.9%、生産年齢人口割合59.2%、老年人口割合28.8%となっています。
1990年では幼年人口割合18.2%、生産年齢人口69.7%、老年人口割合12.1%でした。人口は1990年が1億2361万人、2020年は1億2567万人です。つまり人口は横ばいですが、生産年齢人口割合が10.5%も低下しました。労働者不足が進んでいることは明らかです。
また産業構造の高度化によって農業従事者は、1990年の849万人から、2019年には277万人にまで減少しました。1947~1949年生まれの「団塊世代」が引退すると、さらに農業従事者が減少するでしょう。