五輪敗退のなでしこジャパン、「澤穂希待望論」がかなわない理由Photo:Maja Hitij/gettyimages

東京五輪でのメダル獲得を目標に掲げていたサッカー日本女子代表・なでしこジャパンが、不完全燃焼の戦いを続けた末に準々決勝で姿を消した。高倉麻子監督の進退が問われる状況で、待望論が浮上している世界的なレジェンド、澤穂希さんにもすぐには代表チームの監督を務められない事情がある。(ノンフィクションライター 藤江直人)

不完全燃焼の戦いを続け
準々決勝で敗退

 もろさを示すデータを覆す道筋すら見つけられないまま、高倉麻子監督に率いられたサッカー日本女子代表・なでしこジャパンの東京五輪が、準々決勝敗退と夢半ばで終焉(しゅうえん)を迎えた。

 なでしこ史上で初めての女性指揮官として、現役時代に日の丸を背負った高倉監督が就任したのは2016年4月。直前のアジア最終予選で一敗地にまみれ、リオデジャネイロ五輪出場を逃したなでしこの再建を託されての抜擢だった。

 以来、高倉体制下で「65」もの国際Aマッチに臨み、34勝10分け21敗の星を残しているが、実は先制された試合に限れば、3分け20敗と一度も勝っていない。

 東京五輪でも1-1で引き分けたカナダ戦、0-1で負けたイギリス戦、そして1-3で敗れて大会から姿を消したスウェーデンとの準々決勝で、全て先制を許していた。

 女王の座に君臨してきたアメリカに続いて、近年の女子サッカー界を席巻しているカナダやヨーロッパ勢との距離を縮めるどころか、逆に引き離されてしまった感が否めない。しかし、戦いを終えた高倉監督はどこか達観していた。

「選手たちは日々努力してくれましたし、レベルアップもしていますけど、それ以上に世界の女子サッカーそのものが、ものすごい速度で進化を遂げている。この場で答えを出すのはなかなか難しいけれども、やはり負けたという事実がある中で、自分たちの武器以上の何かを持たなければいけないのかなと思っています」