金融市場への介入
中長期的な経済への不安

 今後、中国共産党政権は企業の事業運営への関与に加えて、金融市場への介入もより重視するだろう。

 独禁法などを理由とする企業への圧力強化によって海外投資家は中国株へのリスク回避姿勢を強め、中国株式市場は不安定化しやすい。それが、A株市場(上海・深センの株式市場の種別)で80%程度を占める個人投資家をはじめ、中国の社会心理に与える影響は軽視できない。株価の下落は「負の資産効果」を及ぼし、中国の社会心理を不安定化させる。

 その影響を抑えるために、「国家隊」と呼ばれる政府系機関投資家による本土株(上海・深セン市場)の買い支えは増える可能性がある。在来分野での雇用維持のためにインフラ投資も強化されるだろう。

 共産党政権は中小企業への資金繰り支援も重視している。つまり、企業の事業運営、資産価格、および経済政策の三つの点から共産党政権による経済と社会への統制は強化されるだろう。それは短期的に中国経済を下支えする可能性がある。そうした見方から、中国株への投資を重視する投資家はいる。

 しかし、長期視点で中国経済の展開を考えると、経済全体での資本効率性が低下する中で、経済と社会への統制強化が人々のアニマルスピリットを高め、イノベーションを支えるかは見通しにくい。

 中国経済では生産年齢人口の減少、不動産バブルの膨張、経済格差による社会心理の不安定化、コロナ禍による人々の予備的動機の高まりといった課題も増えている。また、半導体製造技術などの先端分野に加えて人権問題でも米中の対立は先鋭化する可能性が高い。

 どこかのタイミングで中国の債務問題や社会心理の悪化が株価の調整リスクを高め、本土からの資金流出圧力が高まる可能性がある。中国人民銀行が「デジタル人民元」の実用を目指しているのは、中長期的な経済への不安が高まっているからだろう。