中国が「ゆとり教育」に突き進むワケ、塾禁止・宿題軽減に不安も続出厳しい受験戦争で知られる中国、政府は教育に関して新たな方針を発表した Photo:PIXTA

7月下旬、中国政府が発表した学校教育に関する「ある通知」が国民を驚かせた。通知では、小・中学校の宿題を軽減するほか、営利目的の学習塾を認めない旨が記されており、教育関連企業の株価は急落した。厳しい受験戦争や学歴社会で知られる中国が、「ゆとり教育」とも取れる方針を発表した理由とは。(日中福祉プランニング代表 王 青)

週末、夏・冬休みの塾は「禁止」
新たな方針に教育業界は騒然

 7月24日、中国共産党中央弁公庁と国務院が「全ての地域で義務教育段階の生徒の宿題負担を軽減、学外教育の負担を軽減する」という通知(中国語の略称:双減文件)を発表した。

「宿題負担を軽減」に関しては、以下のような内容が記されている。

1.保護者による宿題の指導やチェック作業を禁止する。
2.小学校第1~2学年に宿題を出すことを禁止。宿題の量は第3〜6学年は平均1時間以内、中学生は90分以内。
3.就寝時間を厳守。学校と保護者は、宿題の完成を促す。また、家事やスポーツ、読書などを奨励する。
4.一般企業の法定退勤時間まで放課時間を延長。放課までは教師による宿題や問題の解説などの学習指導を行う。
5.国が優秀な教師を起用し、全国範囲の無料オンライン学習を正式に開始する。

 二つ目の「学外教育負担の軽減」については、

1.全国公立校の在職の教師は校外で有償での学習指導を厳禁する。見つかった場合は、教師の資格を剥奪する。
2.小中学生対象の学習塾の新規開設を認めない。既存の塾は非営利団体として登記し直す。その上、営利目的の活動を行ってはいけない。学習塾は株式市場で資金調達して学習塾事業に投じることを禁じる。投資会社も株や現金などで投資してはいけない。
3.週末や祝日、夏、冬休みに塾の学習を行ってはいけない。就学前の児童を対象にする学習類(英語も含む)の塾を厳禁する。

 と述べられている。

 この「通知」は、学校や学習塾関係者にとってまさに「寝耳に水」だった。関連企業にも即座に影響が出た。好未来(TAL Education Group)や新東方(New Oriental Education)などの大手学習塾はもちろん、中小の教育関係会社も免れることなく、軒並み株価が30~50%以上急落。「全滅」状態となった。