「秩序ある競争の環境をつくる」、中国の独占禁止政策

 ドイツの政策と中国の改革措置の類似点でも指摘しているように、中国は今、公平に競争できる環境をつくろうとしている。それが「独占禁止」政策である。

 昨年12月と今年4月の2回の政治局会議では、「独占禁止の強化と資本の無秩序な拡大の防止」「プラットフォームの経済監督管理の強化・改善」が打ち出されたが、7月30日の政治局会議では言及されなかった。

 だが、これはインターネットプラットフォーム企業への規制が一段落したということではなく、秩序正しく行われていることを意味している。

 今回の政治局会議では、「重点分野のリスクを防止・解消し……企業の国外上場監督管理制度を十全化しなければならない」という文言が見られたが、中国配車サービス最大手の滴滴の米国上場事件によって引き起こされたデータセキュリティー問題への対応が行われたものと思われる。

 工業・情報化部は7月30日、大手のインターネット企業12社を集めて座談会を開き、独占禁止法の順守、データの安全確保、インターネット大企業の責任、海外での上場の監督管理などについて伝達した(参照)。

 7月30日の政治局会議では独占禁止の強化やプラットフォームの監督管理の改善などについて言及されなかったのは、資本市場を落ち着かせたいとの思惑があった可能性が高い。というのは、A株は23日、26日、27日と3営業日連続で急落し、市場がパニックになっていたからだ。

 中国政府は独占禁止について、企業家にメッセージを発している。

 劉鶴・国務院副総理は7月27日、「専精特新」中小企業サミットフォーラムで、「多くの企業家たちが中国の経済・社会発展の客観的趨勢を把握し、冷静に情勢を分析し、国全体の利益から出発し、しかるべき社会的責任を負い、専門を深めることを堅持してほしい」とも述べたことはその一例だ。

 また、7月30日の政治局会議では「完全・正確・全面的を旨とする新たな発展理念を貫徹する」ことが述べられ、「完全」という言葉が初めて登場した。いかなる資本も、今の最大の政治的正しさを把握すべきだという政府のメッセージだ。

 中国共産党は2013年に「統一的・開放的で秩序ある競争の行われる市場体系を構築する」と述べていたが、独占禁止の動きは「秩序ある競争」が行われるための措置の一つだ。

 中国の経済モデルは、数年前までは「大企業グループ」を中心としたモデルに向かっていたが、現在は「独占禁止」「共同富裕」が新たな時期の大戦略となり、実体経済の発展、ハイエンド製造を重視するドイツモデルに向かっているとみることができる。

 中国は外国の政策をうまく取り入れて発展を図ってきた。中国政府は「他国のモデルを完全には引き写さない」という方針を堅持しているため、完全に「ドイツ化」はしないだろうが、質の高い経済発展を図るためにドイツの手法に大いに学んでいることは確かである。