中国人が失望した東京2020とは

 東京も北京も予想に反して経済は潤わなかった…という面は共通しているが、今回の東京2020をめぐって、内外の中国人が失望したことがあった。それは7月23日の開会式と8月8日の閉会式だ。

「中国人と日本人では美意識がぜんぜん違う」「芸術性からは程遠い」などの声が上がる一方で、「北京五輪があまりに素晴らしすぎた」という声もあった。

 中国のバブル絶頂期に開催された2008年北京五輪の開会式の目玉は、ロス五輪の金メダリスト・李寧氏が務めた「最後の聖火ランナー」だった。空中に吊り上げられた李寧氏が点火をするなど、開会式の演出は世界をあっと言わせるような凝りに凝ったものだった。この中継の模様は世界の20億人が見たといわれている。

 また、中国東方航空の機内誌は、「開会式の演出で使用された衣装は1万5000着、小道具に至っては9935個。また2390カ所に照明器具や電光掲示板が配置された」と報じた。中国政府が2009年6月に発表した「会計結果報告書」によれば、オリンピック・パラリンピックの開閉会式に投じたコストは8.3億元(約124億円)という。

 ちなみにこの「会計結果報告書」によると、北京五輪の北京オリンピック組織委員会の収入は205億元(約3075億円)、支出は193億元(約2895億円)となった。

2008年は中国にとって不運の年

 北京五輪は国威発揚と結びつける派手な演出が目立ったが、実は中国を取り囲む情勢は厳しいものがあった。

 国際情勢に目を向ければ、2008年3月にチベット自治区ラサ市で起こった暴動を発端にチベット問題が再燃し、中国と欧米の関係がギクシャクした。また、2007年9月以降、米国のサブプライムローンがほころびを見せ始め、2008年9月に米リーマン・ブラザーズが経営破綻する。この年、訪中した外国人観光客(香港、台湾、マカオを除く)は延べ2432万人となり、前年比で6.8%減少した。

 さらに、2008年に中国は大地震に襲われた。同年5月12日、四川省アバ・チベット族チャン族自治州汶川県でマグニチュード8.0の「四川大地震」が起こった。このとき、8万7476人の死者と、累計4616万人の被災者を出し、多くの国民が悲嘆に暮れた。中国政府からすれば、3カ月後に迫る五輪どころではなかった。

 当時の日中関係は、「戦略的互恵関係」を結びパートナーシップを強化する一方、“段ボール肉まん事件”や“毒ギョーザ事件”といった食品安全をめぐる問題が報道され、日本人の中国に対する印象は良いものではなかった。