「とにかく残業時間を減らさないと話にならないです」――。こう話すのはとある中堅メーカーの人事担当者の西山さん(仮名)。働き方改革により法定労働時間の厳守が必須となった上、社長命令もあり、社員一人一人の労働時間に目を光らせてきたそうです。西山さんの努力の甲斐もあってか、今のところ残業の限度時間をクリアできているものの、今後やってくる繁忙期をどう乗り切るかに頭を悩ませています。一体どうしたら良いでしょうか。(特定社会保険労務士、大槻経営労務管理事務所代表社員 大槻智之)
法令違反で罰則が適用に!
2019年4月に労働基準法(労基法)が改正され、それまで青天井であった時間外労働に上限が設けられました。そして、2020年4月からは中小企業にも上限が適用されました。
従来は、残業時間の上限に決まりがなかったため、会社は社員に対し、1カ月に100時間でも200時間でも残業を命じることができたわけです。また、時間外労働(残業)と残業時間に関わる「36協定」に関するルールが法令で定められていなかったため、厳格に取り締まることができませんでした。
そこで、法改正が行われ、残業時間に上限時間を設け、その上で違反した場合には罰則も適用できるように改正されたのです。
さらに、中小企業は2023年4月に割増賃金の猶予措置が終わり1カ月60時間を超える時間外労働の割増率が25%以上から50%以上になる予定です。
このような背景もあり、人事担当者、特に西山さんのように中小企業の人事担当者は残業時間削減に神経をとがらせているのです。
しかし、いくら人事が頑張ったところで、部署や社員それぞれが応じない限りと残業はなかなか減りません。どうすればいいのでしょうか。