安い日本で我慢するだけじゃ
何も良くなりはしない

週刊ダイヤモンド 2021年8月28日号『週刊ダイヤモンド』2021年8月28日号の第1特集は『安すぎ日本 沈む給料、買われる企業』。大江千里氏のインタビュー以外にもさまざまなデータとエピソードで、安すぎる国となった日本の今をレポート

 安くなっていく日本でただひたすら縮こまって、我慢していればいつか良くなる――。そんな期待はきっと幻想です。それよりもコロナ禍が一段落したら、とにかく1年でも2年でも日本を出てみてはどうでしょうか?米国じゃなくても、オーストラリアでも欧州でも中国でもいい。そうすれば日本の安さや弱さが分かるし、同時にいいところも見えてきます。

 日本人は我慢強いけれどもプライドが高いので、外国語のちょっとした間違いなんかを気にします。日本人同士で細かな文法の間違いを指摘して揚げ足を取り合ってみたりね。でもちょっとした文法の間違いなんて、米国人に言わせれば「Give me a break!(勘弁してよ、大目に見てよ)」です。

 書を捨てよ町へ出よう、ついでに我慢もつまらないプライドも捨てて、世界に出てみようよ。なんたって、60歳になる僕が「大江千里の代表作はこれから生まれるんだぞ」って思って奮闘しているのです。7月に出したアルバム『Letter to N.Y.』ではコロナ禍のさなか、全ての音を自宅で自分で弾いて、コンピューターを使って仕上げました。名付けてパンデミックジャズです。僕もあなたも、自分が思っている以上にタフでサバイブしていけるのだと思います。