安いニッポン 売られる日本#6Photo by Kazutoshi Sumitomo、写真提供:谷本真由美氏

先進国の中で「賃金が安い国」に成り果てた日本。このままいくと、どうなってしまうのか?特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#6では、エコノミストの河野龍太郎氏と英国在住の著述家“めいろま”こと谷本真由美氏に、貧困化する日本の現状と未来、そして処方箋について語ってもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

真面目に働いても貧しい日本人
このままじゃ「ギリシャ化」一直線

河野龍太郎(以下、河野) 日本人の賃金が上がらない大きな要因は、雇用の二極化にある。正規労働者と、パート社員や派遣社員のような非正規労働者の二重構造になっている。

 非正規労働者は全体の4割を占めるが、教育訓練の機会は乏しい。この結果、生産性が上昇しない。また正規労働者に対しても、コスト削減のあおりで職場にゆとりがなくなり、以前のように人的資本投資を実施しなくなった。これも日本の生産性が上昇しない要因だ。

 2010年代後半はバブル経済期に匹敵するほどの人手不足だったが、賃金は上がらなかった。省力化投資を行う代わりに、高齢者や主婦、外国人などスキルが低く賃金の安い労働者を増やすことで対応したのだ。

 これらの結果、日本企業の生産性は上昇せず、賃金も上がらなくなっている。企業業績が改善しても、経営者は「従業員の生産性上昇ではなく、コストカットのおかげ」と考えるから、賃上げで報いようとはしない。

 だがこのまま賃金を抑えていけば、消費は増えず、国内市場で売り上げが増えない。そうなると経営者はさらに賃金を抑制する。悪循環から抜け出せない。

谷本真由美(以下、谷本) 日本では正規と非正規が同じ労働をしていても、非正規の賃金の方が低い。これはとても不公平だ。例えば私が働いているITコンサルティングの業界では、英国なら1日15万円の賃金をもらえるところを、同じレベルの人が日本では月収30万円前後、すなわち10分の1に近い水準で働いていることがある。