日本は家計に占める教育支出の負担が、先進国でも高いことが明らかになっている。ところがこの日本の教育を「安くてコスパがいい」と思っているのが、中国人である。『週刊ダイヤモンド』2021年8月28日号の第1特集『安すぎ日本 沈む給料、買われる企業』では、安くなった日本のさまざまな局面をレポートしている。この特集に関連して、日本人にとっては高い大学教育に群がる中国人の動向をお伝えする。(ジャーナリスト 高口康太)
コロナ禍が収束すれば
中国人留学生は大きく増える
「コロナ禍が収束すれば、中国人留学生は大きく増えると予想される。学費の安さは大きなメリットだ」
東京・新大久保で、中国人向けの進学予備校「行知学園」を経営する楊舸(ヤン・グー)社長は言う。この話を意外に思われる方も多いのではないか。日本国内ではむしろ大学の学費高騰こそが問題視されてきたからだ。
文部科学省によると、国立大学の授業料標準額は1989年に33万9600円だったのが、2019年には53万5800円と58%増えている。私立大学の平均額も同じ期間に、57万584円から91万1716円へと60%増えている。
それでもこの額は、米国や英国など世界から留学生を集める国と比べるとまだまだ安い。
「中国人にとって一番人気の留学先は米国だが、大学ごとに学費がまったく違うため、単純な比較は難しい。だが、一般的な大学でも日本の私立大学医学部ぐらいのコストは必要になる」(楊社長)
中国の留学仲介企業Dream Goが「2020年の米国留学費用」として紹介している事例がある。ペンシルベニア州立大学に留学した場合、学費は年3万2382ドル(約355万円)、住居費が約1万2000ドル(約132万円)。諸費用すべてを合算すると、年に5万~6万ドル(約548万~658万円)の費用が必要になるという。いくら中国人が豊かになったとはいえ、一般の中産層には厳しい負担だ。
米国留学にかかる費用に比べれば、数分の一のコストで住む日本留学はいかにも「おトク」。学費と生活費は、一般的な中国の世帯でも仕送りで賄える。以前ならば都内のコンビニや居酒屋のアルバイトは中国人留学生が多かったが、最近ではバイトをしないで仕送りで生活する学生も多い。