藤井聡太二冠(棋聖・王位)は7月3日に静岡県沼津市で行われた渡辺明三冠(名人・王将・棋王)との棋聖位の防衛戦で、最年少九段(18歳11カ月)と最年少タイトル防衛を達成した。8月25日には挑戦者の豊島将之二冠(竜王・叡王)を破り、4勝1敗で王位も防衛。その豊島二冠と2勝2敗になっている叡王戦五番勝負の最終局(9月13日)に「史上最年少三冠」がかかっているが、8月30日には竜王戦の挑戦者決定三番勝負で永瀬拓矢王座(28)を下して豊島竜王への挑戦権を獲得したため、年内に四冠達成の可能性も出てきている。中学生でプロ棋士(四段)デビュー、破竹の勢いで勝ち星を重ねる藤井二冠について、同じく中学生でプロデビューし、日本将棋連盟の前会長、十七世名人資格者・谷川浩司九段はどう見ているのか。(本文敬称略)
二人の天才
藤井聡太は2002年、愛知県瀬戸市出身。2016年、史上最年少の14歳でプロ入り(奨励会で四段昇段)。デビュー戦で元名人の加藤一二三九段(後に引退)を破ったのを皮切りに、29連勝という新記録を打ち立てる。
2018年には全棋士とアマの強豪、女流棋士が参加する朝日杯将棋オープンで初優勝、この時は準決勝で羽生善治(永世七冠資格)を破り、決勝で広瀬章人(後に竜王)を破った。翌年も連覇。今年は渡辺らを破って三度目の優勝をした。2020年7月には渡辺棋聖を3勝1敗で破り、史上最年少でタイトル獲得。8月には木村一基王位に4-0のストレート勝ちしてすぐに二冠を達成した。トップ級棋士も参加する「詰将棋解答選手権」では小学校6年から優勝し続けている(昨年と今年はコロナ禍で中止)。
今年は渡辺を退けて棋聖を初防衛し、史上最年少の九段を達成した。すでに王位の防衛戦が始まっており、三冠目を狙い叡王戦にも挑戦中だ。今春、卒業寸前で高校を中退し、棋士に専念している。
実は、中学生でプロデビューした棋士は藤井を含め歴代で5人しかいない。しかも全員将棋史に名を残す超一流の棋士ばかりだ。そのうちの一人が、『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書)を上梓した谷川浩司九段である。