全日本空輸(ANA)のボーイング787型機が、9月で初受領から10年を迎える。既存の中型機を置き換えるだけでなく、航続距離の長さを生かした新路線開拓や、貨物も積めることで中距離LCC(低コスト航空会社)のようなニュービジネスにも投入できる787。就航から10年を迎える前にコロナ禍という大転換点に遭遇したが、経済性の高さでますます重用される機材になりそうだ。(Aviation Wire 編集長 吉川忠行)
名実ともにANAを支える787
コロナ禍でも新造機を受領
全日本空輸(ANA)のボーイング787型機が、9月で初受領から10年を迎える。ANAは787のローンチカスタマー(初期発注者)で、2004年4月26日に50機を購入すると決定。国内線と国際線に投入している中型機のボーイング767型機を置き換えるとともに、これまでは航続距離の関係で大型機でなければ就航できなかった長距離国際線のうち、メキシコシティーのように旅客数は少ないながらも確実に需要がある路線にも、採算性が見込める中型機で進出するのが狙いだった。
機体の構造部位のうち、35%を日本の重工各社が製造する787。当初は08年の北京五輪前の納入が予定されていたが、開発遅延やトラブルにより3年遅れた。機体の安全性を証明する「型式証明」をボーイングが国土交通省から取得したのは11年8月29日で、同9月25日(日本時間26日)にANAへ初号機が引き渡された。
新型コロナウイルス感染症の影響で大量運休が続く今、787は名実ともにANAを支える航空機である。驚くなかれ、コロナ禍にもかかわらずANAは787新造機の受領を続けている。既存機を低燃費・低騒音の787に更新することで運航コストを抑えることができるからだ。
また、旅客需要の低迷を受け、これまで大型機を投入していた長距離国際線の一部を中型機の787に小型化することで、提供座席数の適正化やコスト削減につなげられるメリットもある。
そんなANAの「相棒」ともいえる787について、本稿はその軌跡を筆者が現場で撮り続けた写真とともに振り返り、コロナ後の近い未来に向けて考察してみたい。