国内未承認の最先端治療「PSMA治療」が、前立腺がん患者に良好な成績を示している。オーストラリアでこの治療を受けた患者と、海外渡航をサポートするコーディネーターに、現地での治療と生活の詳細を聞いた。(聞き手・構成/医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)

仙骨の転移がPSMA治療で70%強消えた
オーストラリアでの治療体験記

西郷輝彦さんPhoto:JIJI

 前回記事では、PSMA治療について解説しました。

 PSMA治療とは、去勢抵抗性前立腺がん(男性ホルモンを抑える治療をしているにもかかわらず、進行してしまった前立腺がん)の最先端治療です。

 PSMAと呼ばれる、タンパク質と特定してつながりあう分子に放射性物質を融合して、点滴のルートから静脈注射します。日本で治療の選択肢が限られてきた去勢抵抗性前立腺がんの患者さんの余命を半年以上延ばす可能性があり、副作用が少なく、抗がん剤治療が難しい患者さんやご高齢の方も安全に治療できます。

 ドイツやオーストラリアでスタートし、米国でも承認されていますが、日本では放射性物質の取り扱いに関する法的制限があり、現在まで承認されていません。

 2020年11月~2021年4月の半年間、オーストラリア・シドニーに滞在しPSMA治療をされた、光永幸康さん(東京都在住の73歳、ファッションブランド「コーザ・ノストラ」を生産販売する株式会社コムト取締役相談役)にお話を伺いました。

Q:今のご体調はいかがですか。

 とても良好です。PSMA治療は私にはぴったり合いました。今は腫瘍マーカーPSAの値も正常値に落ち着いています。コロナ感染が拡大した東京を離れ、函館に1カ月疎開して帰ってきたところです。