今年9月1日で関東大震災から98年目を迎えた。約100年前に起きた大地震は、日本に甚大な被害を及ぼすとともに、その後の日本の鉄道史を大きく変えることとなった。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
関東大震災を契機に
都市交通の主役は市電から国鉄へ
98年前の1923年9月1日午前11時58分、相模湾北部を震源とするマグニチュード7.9の大地震が発生した。
ちょうど昼時だったことから、調理のために火を使っていた家庭が多かったこと、また折しも日本海に台風が停滞していた影響で風速10m/s以上の強風が吹き荒れていたことなど、いくつもの悪条件が重なり、市内各地で発生した火災は瞬く間に燃え広がり、当時の東京市の面積の4割を焼き尽くした。現在では「関東大震災」と称されるが、当時の文献には「関東大震火災」と書いているものも多い。
東京市役所が編さんした『東京震災録』によれば、この地震と火災により、死者・行方不明10万人以上、全焼38万世帯、被災者は約340万人、損害額は推定約55億円に上った。1922年度の一般会計予算は約14億7000万円だったので国家予算の3倍、文字通り国家存亡の機といえる大災害であった。