職場は、労働の対価として賃金を確保しに行く場
でも、そこまでひっくるめてやろうとする人が「職場の人間関係に疲れた」と言って来院されることが多いです。
嫌いな上司や同僚、後輩の悪いところを指摘し、上司に態度を改めさせる必要もないし、自分のことを認めさせる必要もないのに「あの人は、あそこを直さないと人間としてダメだ!」と怒るのはナンセンス。
でも、そうせねばならないと思い込んでいる患者さんは少なくありません。
そういうとき、私は次のようにアドバイスします。
「もし、あなたがその人たちの教育係でないなら、それは仕事の範囲を超えたお節介ですし、エネルギーの無駄遣いなので止めましょう」
嫌いな他人が他の人に嫌われようが、陰で文句を言われていようが、放っておいたらいいし、そんないやな人に対して仕事と関係ないところで悩む意味はありません。
あなたは、会社にお友達や家族をつくりに行っているわけではなく、労働の対価として賃金を確保しに行っているわけです。
ならば、ある程度成果を出して一定の評価が得られる環境であれば、上司がどうあろうと、自分は自分のやるべきことをすれば賃金をもらう権利が発生します。
ここで「他の人もあの上司に酷いことを言われて困っていたから」と躍起になったら、その分損をするのは自分です。
職場の人と無理に仲良くしようとしなくていいんです。
仲良くなる必要はないし、職場の空気を悪くしないために「皆と、そこそこ仲良しな仮面」を被って仕事中は過ごすほうが、しんどくありません。
「そこそこ仲良しな仮面」を被ったからといって、実際に心の底から仲良くしなくてはいけないわけではないのです。
上司の言動が苦痛になるのであれば、ただそれを避けることだけに手をつくせばいいし、その行動は悪いことでもなんでもありませんので、大丈夫です。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく、行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーの道を志し文系に進学する。しかし「カウンセラーで食っていけるのはごく一部」という現実を知り、一念発起し、医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら、勉学とバイトにいそしみやっとのことで卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を専攻したが、医師研修中に父親が亡くなる喪失体験もあり、さまざまなことに対して自信を失う。医師を続けることを諦めかけるが、先輩の精神科主治医と出会うことで、精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にてさまざまな分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は、双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者が多い急性期精神科病棟の勤務医。「よりわかりやすく、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。個人クリニック開業に向け奮闘中。うつ病を経験し、ADHDの医師としてTwitter(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Twitterフォロワー4万人。『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』が初の著書。