コロナの感染拡大、経済活動自粛による困窮、他人とコミュニケーションできないことからくる孤独感や閉塞感、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、私たちは、いま多くの生きづらさを感じさせる事柄に取り囲まれています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、できるだけ快適に生きていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)が発売されました。同書の中には、生きづらさを解消するための実践的なヒントが詰め込まれています。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けします。心がスーッと軽くなる珠玉のアドバイスにお付き合いください。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

「他人がやっていないから自分もやらない」<br />という選択は、<br />なぜ、やってはいけないのか?Photo: Adobe Stock

DV(家庭内暴力)を受けていたのに
離婚しなかったBさん

「クラスメートが皆、幸せな家庭を築いているのに、自分だけが失敗者になるのは嫌だ」と、離婚という非常に個人的な問題すらも他人の顔色を見ながら行動を決めようとする人がいます。

 Bさんもそんなふうに考えてしまった一人でした。

 BさんはDV(家庭内暴力)の被害者でしたが、どんなに酷い暴力や暴言、行動の制限(ハラスメント)を受けても「周りは離婚してないから……」と離婚しませんでした。

 周囲の友人がせめて逃げるように伝えても「皆夫婦で仲良く暮らしているから……」と夫と同じ家で生活することを選びました。

 結果として、Bさんは心身共に大きな打撃を受けて受診するに至りました。

 確かに周りと違う行動を起こすとき、「自分がわがままなんじゃないか?」とか「自分さえ我慢すれば……」とか思ってしまいがちです。

 しかしBさんの周りの人は、Bさんのように夫からの暴力や暴言、支配などは受けていませんでした。

 この場合は、周囲の人と自分を比較すること自体が意味のないことです。クラスメート皆が誰も離婚していないから自分も離婚しない、という選択は全く合理的ではありません。

 実際に暴力を受けている人が、そうでない他人と同じ基準で離婚をするかどうかを考えること自体がおかしな話ですし、なぜ、そこまで他人の視線を気にしてしまうのか、不思議といえば不思議です。

 このように、他人がやっていないからといって自分もやらないでいると、本来やらなければいけないことを先延ばしにしてしまい、自分の置かれている環境がどんどん悪化していくというのは、よくあることです。