日本企業のサラリーマン社長には、菅首相のように、「人事」の権力を振りかざすことで周囲に恐れられているだけで、トップとしての危機管理能力・発信力・包容力を持たない人物が少なくないのではないか。これらの点について菅首相は、組織のトップたちが他山の石とすべき反面教師だと思う。

 今日、官民を問わず組織のトップに求められる役割は大きい。「人事だけの人」が、順繰りに就任したのでは務まらない場合が多いことを覚えておきたい。

 ちなみに、かつて菅氏とある政策で対立して左遷されたとされる官僚は(朝日新聞で大きく取り上げられた)、筆者の大学時代のクラスメイトだった。

 政治家が正しい政策を遂行するために官僚に対して人事権を使うことが必要な場合はある。しかし、立場上の上司であるところの政治家としてより望ましいのは、意見が異なる官僚に対して言葉を尽くして説得することだ。

 わがクラスメイトは、自分の意見とは異なることが決まっても、理由があれば納得できる人物であるし、菅氏がその後も彼を使っていれば、良い情報や意見を伝えたはずだと思う。

 組織のトップ(市井の社長さんも、次の首相も含む)は、自分が「人事権だけ」を使って物事を進めたと自覚したときに(この自覚自体が本人には至難ではあるのだが)、自分の力量不足を知るといい。これは、菅氏が日本国民に残してくれた貴重な教訓だ。

「次の首相」を巡る
5人のプレーヤーたちへの寸評

 本稿執筆の9月7日時点では、自民党総裁選の候補者は確定していない。推薦人の確保も含めて自民党の総裁選に確実に立候補するのは、現時点では、岸田文雄氏だけだ。

 岸田氏を含めて、今のところ将来の首相候補に名前が挙がっている方々について簡単に触れてみよう。