●岸田文雄氏

 岸田氏は今回、「男を上げた」と思う。各方面への支持の取り付けにぐずぐずせずに立候補を表明したことは、立場上必然だったとしても適切だった。

 この立候補表明は「総裁選先送りは不可」という流れにつながった。加えて、総裁選出馬に当たって党役員の任期制限を掲げたことも、二階俊博幹事長を菅氏が「切る」ことにつながるなど的確な発信だった。今回は覚悟が決まっていて、さえている。

 しかし菅氏が立候補しない状況になり、必ずしも当選有力とはいえない状況になった。総裁選が、来る衆院選そして来年の参議院選挙の「選挙の顔」選びに変質した点からだ。

 他の大派閥の支持をとりまとめながら、決選投票に持ち込むことができれば勝算があるかもしれないが、いかがなものだろうか。

●高市早苗氏

 岸田氏の次に立候補の意向を示した高市早苗氏も、このことでご本人の価値を上げたと思われる。何と言っても女性として一番に手を上げて注目を浴びたタイミングが良かった。また、安倍晋三前首相の路線を政治・経済両面で引き継ぎ、特に経済政策について「アベノミクス」の積極的拡大バージョンを主張していることは政策の議論として好ましい。

 政治キャリア的に、正直なところ今回勝てるとは思えないのだが、いいタイミングで立候補の意欲を示したことは彼女にとってプラスだったと思う。

●野田聖子氏

 一方、近年は総裁選のたびに名乗り出る野田聖子氏は今回、立候補の意思表示において高市氏に後れをとり、「女性代表としての総裁候補」のポジションを先に持って行かれた。このポイントを先取りされると、独自にアピールできるポイントを作るのはなかなか難しい。今回は「失敗」に近いだろう。