●河野太郎氏

 筆者は予想として、今回の総裁選は河野太郎氏が本命だと思う。そして、今回「勝負」に出るタイミングはたぶん適切だ。

 河野氏はワクチン接種担当の責任者なので総裁選に立候補していいのかという(単なる嫌がらせの)声にさらされるかもしれない。とはいえ、無視できない混乱はあったものの、コロナのワクチン接種はそれなりに進んでいるので、この点は決定的な弱点にならないだろう。そもそも「コロナ対策に専念」と言っている菅首相が彼を支持する意向であるらしい。

 自民党の総裁選は党員や特に議員にとって、「選挙の顔選び」であるのと同時に、次の人事権者(総裁・首相)を選ぶ「勝ち馬選び」のゲームでもある。

 今回の総裁選は議員以外の党員票が半数を占める。加えて、自らの選挙が関心事の多くの自民党議員にとっては、党首の党員以外の世間に対する好感度も重要なファクターだ。

 総裁選期間中の情勢調査の結果が自民党内で明らかになると、党員票で河野氏の人気が高いことと、世間の好感度で河野氏が圧倒的であることが分かるのではないかと予想する。すると、総選挙後の少しでも有利なポジションを求めて河野氏支持に回る派閥や議員が続出するのではなかろうか。

 河野氏が今回の流れから首相になるとすると、このときに真に信用できて、同時に使える能力がある協力者を何人取り込むことができるかが重要だ。

 自民党内では、河野氏の原子力発電に関する政策(反原発派)や皇室のあり方などの考え方に関して拒否感を持つ議員が一定数いるだろう。しかし、彼らはいずれもが自分の選挙と将来のポストを心配している人たちだ。河野氏は、彼らの「顔を立てながら」彼らを取り込むといい。決して、踏み絵を踏ませたり、まして威張ったりしてはいけない。

 河野氏の過去の発言や政策のあれこれに対して難癖をつけようとしたり、言質を取ろうとしたりする人たちもいるだろう。そういう人に対しては、「私も少し大人になったので、皆さんのご意見をじっくり聞きたい」「私も一応政治家なので、主張と妥協についてはその都度考えますよ」というくらいの曖昧なことを言って、ニッコリ笑うくらいのズルさを発揮するといい。

 挑発には決して乗らないといった芸当が、さて、あの河野氏にできるのだろうか(愚痴をこぼせる相手で、同時に河野氏に直言もできるような良いアドバイザーが必要だが、人選はいかにも難しい)。