「途中段階なら何度間違えてもいい」

 人の期待に応えたい思いが強い人は、「仕事でヘマをしたくない」「評価が下がるのが嫌だ」と考えがちで、間違えることが怖くなってしまいます。

 仕事で越えるべきハードルの高さが自分のなかでどんどん上がってしまって、その結果、仕事を人に見せられなくなり、ひとりで作業を抱え込むようになっていく場合があるのです。

 ここでおすすめしたいのが、「途中段階では間違えてもいい」という考え方です。仕事のゴールはまだまだ先で、いまは途中段階だと考えるのです。

 そして途中段階で、周りの人にこまめに相談するようにします。相談すると相手から間違いを指摘されることもありますが、途中段階なので、間違いを直すことができます。

 途中段階でミスを修正し、最後には完璧に仕上げる。

 そんなふうに考えると、目指すべきゴールを変えることなく、途中途中で人を頼れるようになります。ミスが出ても「まだ途中だから大丈夫」と思えます。

 道の途中にはいろいろあるかもしれませんが、最後に帳尻が合えばいい。

「最初から完璧にしようとしなくていい」のです。

(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)

本田秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より、同子どものこころの発達医学教室教授。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。2019年、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演し、話題に。著書に『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『最新図解 女性の発達障害サポートブック』(ナツメ社)などがある。