フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

通常、新車は「発表→試乗→購入検討」の順で世に出ます。しかし、あまりに人気すぎるクルマは、時にこの順番が狂ってしまうことがあるのです。発表からわずか4日で受注停止、5万台という異例の注文に飲み込まれ、試乗会は1年半越しの“事後報告”になってしまったのが、スズキ・ジムニーノマド。希有な経緯をたどったこのクルマ、実際のデキはどうなのか?市街地の試乗記は1年半前にお届けしているので、今回は富士山麓の本格オフロードコースに行って、デコボコなオフロードを走破。その実力をたっぷり確かめてきました。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

 みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。
 今週も明るく楽しくヨタ話から……といきたいところですが、今月からヨタ話は本編後に掲載しています。今回のヨタは、スーパーフォーミュラ観戦記をお送りします。皆さま、本編だけでなくヨタも読んでくださいね(はぁと)。

順番が覆った異例の人気車、発表から1年半後についに試乗会が

 新車のメディア向け試乗会は、一般的に、そのクルマが発表された直後に開催される。

 メーカー、あるいはインポーターが新型車を発表し、メディアの人間が実際に運転する。その評価を読んだ消費者が販売店へ足を運び、購入を検討する(はずである)。多少の前後があったとしても、おおむねこの順序で流れていく。

 ところがこの順序がものの見事にひっくり返ってしまったのが、スズキの「ジムニーノマド」だ。

 ジムニーノマドが発表されたのは、今から1年半も前の2025年1月30日。その際にアナウンスされた発売日は同年4月3日だった。ところが発表からわずか4日後に、スズキは突如受注を停止する。5万台もの注文が集まったからだ。当初の月間販売目標は1200台。単純計算で3年分を超える注文がイッキに押し寄せた。読みが甘いと言えばそれまでだが、さすがにここまで極端な数字はスズキも予測できなかったのだろう。かくしてジムニーノマドは、「買いたくても注文できないクルマ」になってしまった。

 騒動から1年半。メーカーが主催するジムニーノマドのメディア向け試乗会が、ついに開催された。場所は富士山麓の富士ヶ嶺オフロード。2万4000坪の敷地に展開される、本格的なオフロードコースだ。

 用意された試乗車は発売当初のモデルではなく、安全装備や運転支援機能を更新し、7月1日に発売された一部仕様変更車である。マニアの間では便宜的に「2型」と呼ばれるクルマである。待ちに待った試乗会、期待で胸が踊る。

※本連載では、ジムニーノマドの発売直後に、いち早く納車されたAD高橋氏の私物に乗って街を走り、試乗記を掲載しています。市街地の試乗レポートはこちらをご覧ください→スズキ・ジムニーノマド試乗記

5ドア化でどう変わったのか試してみよう

 コンパクトながら本格的なオフロード走行が可能な3ドア軽自動車「ジムニー」が5ドアになったのが今回試乗する「ジムニーノマド」、3ドアのままで普通車になったのが「ジムニーシエラ」である。

300万円弱でこの性能はおかしい…発表4日で受注停止のスズキ・ジムニーノマド、圧倒的実力と「意外な弱点」ジムニーノマド Photo by AD Takahashi

 5ドア化によって後席へのアクセスが容易になり、荷室が広がったことは、カタログを見れば分かる。試乗で確かめるべきは、ジムニーシエラから340mmも延びたホイールベースと、増加した車重を抱えながらも「ジムニー」と名乗るに相応しい悪路走破性を維持しているかどうかだ。

 当たり前の話だが、ホイールベースが長くなれば狭い場所での取り回しは不利になる。車体中央部が障害物に載ってしまい、いわゆる「亀の子」状態に陥る可能性も高くなる。後席と荷室を手に入れた代償はどこまで大きいのか。早速コースを走ってみよう。