コロナ禍では、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。
相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。
本連載は、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所を学ぶものです。著者は、相続専門YouTuber税理士の橘慶太氏。チャンネル登録者数は8.6万人を超えています。また、税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。2023年には、大増税改革と言われている「相続贈与一体化」に完全対応の『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』を出版しました。遺言書、相続税、不動産、税務調査、各種手続きという観点から、相続のリアルをあますところなく伝えています。
税務調査を寄せつけない申告書を作るポイントは2つあります。
①亡くなった方の過去10年分の預金通帳の入出金を事前に確認し、問題点を精査する
②書面添付制度を使い、税務署に①の内容を事前に伝える
まずは①から見ていきます。
過去10年分の預金通帳をチェック
調査官は銀行や証券会社から過去10年分の取引履歴を取り寄せて、多額の現金引き出しや、家族間の資金の移動がないかを、徹底的に調べます。ならば、調査官と同じ目線で過去の取引履歴をチェックし、問題点があれば、事前に処理をしてしまえばいいのです。
しかし税理士の中には、亡くなった方の過去の預金通帳をまったく確認せず、相続発生時の残高証明書だけを見て申告書を作成する人もいるそうです。
これでは、過去に生前贈与があったかどうかも確認できませんし、相続発生の直前に現金の引き出しがあったかどうかもわかりません。過去の預金精査に対する税理士事務所の方針はバラバラで、まったく確認しない事務所もあれば、相続開始3年前や5年前の預金通帳だけ確認する場合などさまざまです。
しかし、私の経験上、相続税の申告をするなら過去10年分は確認するべきだと断言します。※ちなみに亡くなった方の過去の取引記録は、相続人であれば単独で過去10年分取り寄せることができます。