書面添付制度とは?

 続いて、税務調査を寄せつけない申告書を作る上で必ず知っておいて欲しいのが、書面添付制度です。

 これは「税理士が税務署の代わりに、納税者のことを調査しました」という書面を作成し、それを申告書に添付して申告する制度で、税理士だけが行うことを認められています。この制度を利用すると、税務調査に選ばれる可能性が、利用しない場合と比べて低くなります。

 また、通常の税務調査では、調査官が直接納税者の家に訪問して調査が行われますが、書面添付制度を利用した場合には、先に税理士だけが税務署に呼ばれます。そして、その場で調査官の疑問をすべて解消できた場合には、その後の税務調査は省略されます。

 ただ、実際に書面添付制度を使って相続税の申告をしている税理士は、全体の約2割しかいないそうです。素晴らしい制度なのに使わない税理士が多いのはなぜでしょうか。

 それは、書面添付制度を利用し、もし、その書面に虚偽の記載があった場合には、その税理士が懲戒処分の対象になるからです。納税者にとっては良い制度ですが、申告書を作成する税理士の立場からするとリスキーな制度なのです。

 しかし、過去の預金通帳の流れをしっかりと確認している税理士にとっては、自信を持って書面添付制度を利用することができます。ただ、書面添付制度を利用しても中身がスカスカでは、ほとんど意味がありません。

 税務署はコストパフォーマンス(調査に入って、短時間でどれだけ多くの追徴課税をとれるか)を重視する組織です。「この家庭を調査しても、既に10年分の預金通帳を確認しているなら大きな追徴課税は狙えないな……。仕方ない、違う家庭にいくか」と思わせられるかどうかがポイントです。

 過去10年分の預金精査と書面添付制度。この2つをしっかりと行っている申告書であれば、税務調査対策は盤石です。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続ーー日本一の相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を編集・抜粋したものです)