創業120年の老舗中小企業が挑む「無駄を富に変える」新事業とはPhoto:PIXTA

今や多くの企業がSDGsへの取り組みを進め、「持続可能な」社会の実現に向けて動き出している。そうした中で、注目度が高まっているのが「新しい経済のカタチ」とされるサーキュラーエコノミーだ。「無駄を富に変える」発想で、サーキュラーエコノミーのプラットフォーム構築を目指す創業120年の老舗企業の挑戦を紹介する。(ライター 向原 明)

「捨てていたモノ」を原材料として使う
サーキュラーエコノミー

 従来型の大量生産・大量消費の経済は、「資材を調達し」、「モノをつくり」、「使い終えたら廃棄する」までの流れが一直線につながる「リニア(一直線)型」と呼ばれる。最近でこそ、製品のリユースや使い終えた製品のリサイクルが拡大しているが、リニア型の経済では、最終的には廃棄するモノが発生する。

 これに対し、サーキュラーエコノミーは「循環型経済」と訳されるように、製品の設計段階から製品の回収と原材料の再利用を前提とし、使い終えた製品を廃棄せずに回収する。これまで捨てていたモノを原材料として使うことで、循環させる経済モデルだ。

 サーキュラーエコノミーを単純にリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の「3R」の取り組みの延長線上にあるものと考えてはいけない。3Rでは、例えばペットボトルなど「リサイクルできるものはする」が、困難なものは廃棄物になる。サーキュラーエコノミーは、最初から全てのモノの回収と再利用を前提とし、廃棄物を出さないことを目指している点が3Rとは大きく異なるのだ。

 このサーキュラーエコノミーに、創業約120年の老舗企業が本格的に乗り出した。東京・大田区で、金属スクラップや産業産廃物の回収、処理を手掛けてきた東港金属株式会社である。同社は2020年9月に持ち株会社となるサイクラーズ株式会社を設立。サイクラーズの傘下に東港金属をはじめ、中古オフィス機器のリサイクル事業などを展開するトライシクル株式会社や産業廃棄物の運搬を手掛けるTML株式会社などの事業会社を擁し、サーキュラーエコノミーに本腰を入れて取り組む体制を整えた。