心に引っかかっていたイライラも、書き入れるスペースを「汚したくない」という思いから、すっと収まっていくこともある。白い紙を乱雑に埋めるか心を込めて書いていくかでは、書き上がりに大きな違いが生まれる。日記には、精神統一に使われる「写経」にも似た効果があるのだろう。

◇日記のルール(1):5行だけ書く

 著者が5行だけの日記を書く最大の理由は、日記帳の枠が小さいからである。しかしそれ以外にもメリットがある。

 まず、「すぐに書き終わる」こと。その日の出来事の濃淡にかかわらず、所要時間は1~3分で済む。しばらくためてしまって週末に一気に書いたとしても、30分もあれば書き終わる。継続を成功させるには、作業がシンプルであることが大切だ。

 次に「言葉が煮詰まってくる」である。「煮詰まる」という言葉は、行き詰まるという意味で使われがちだが、本来は煮物がおいしく煮えていく様子から生まれた言葉である。

 限られた字数の中、できるだけ多くの内容を表現するためには、言葉を「煮詰めて」いく作業が必要になる。例えば、「もっと努力する必要があると本気で思った」という表現を「真の努力が必要だと痛感した」とすれば、6文字分のスペースが生まれる。書くスペースが限られていることで、濃縮された深みのある言葉が生まれるのである。

 そして「言葉がカラフルになる」。言い換えを模索していくうちに、見事にフィットする言葉に出会うことがある。「孤独」が「無限の自由」になったり、「お腹がすいた」が「何でもうまい状態」に変わったりする。毎日の5行訓練が、言葉のストックやチョイスの強い味方になってくれるのである。

日記のルール(2):いつ書いてもいい

 日記を書く上で必ず直面するのが「毎日続けなければならない」問題である。著者は「手がかりさえ残しておけば、いつ書いてもいい」という。スマートフォンのメモ機能を使って、その日に起きたことのキーワードだけ残しておいて、あとでまとめて書いても構わない。著者も多忙や疲れなどの理由で、1カ月以上書かなかったことがあった。ためてしまっても焦らずに、生活のリズムに合わせて書いていけばいい。

 また、どんな日記帳や筆記用具を使うかも続けるコツにつながる。著者の場合、入社時に買ったシステム手帳をリフィルだけ買い替え、今も使い続けている。

 筆記用具は会社の黒のボールペンだ。会社で使われずに転がっていた使いかけのボールペンを、インクがなくなるまで大切に使っている。