きっかけは、昨年11月、外出禁止令を発令した知事自らが家族といっしょにワインで有名なナパにある高級レストランで政治コンサルタントの誕生日を祝って十数人で会食したことが明らかになったことだった。マスクもつけずに白トリュフやキャビアなど1人1200ドルの最高級コースに舌つづみを打っていたという。

 当初、ニューサム氏は「屋外で妻と一緒に食事をしただけだ」と言い逃れようとしたが、それがかえって傷口を広げた。

 その事実をスッパ抜いたのは保守系のフォックスニュースで、待っていましたとばかりに現場を目撃したという匿名の女性が撮影した写真と彼女の肉声インタビューまで公開したのである。

 来年の中間選挙を前に、すっかりトランプ前大統領色に染まった共和党がこのチャンスを見逃すわけがない。コロナウイルス感染拡大、ホームレス急増、山火事対策の不備、夫人のスキャンダルなどありとあらゆる「理由」を並べ立て、ニューサム知事追い落としの署名集めを開始した。トランプ前大統領の政策担当上級顧問だったスティーブン・ミラー氏も暗躍していたという。

反対多数で
リコールは不成立

 アメリカで最も進歩的とされるカリフォルニア州では、1911年に直接民主制が導入された。目的は特定の利益団体による不公正な利益誘導を阻止するためだった。ところがリコール投票の実施に必要な署名数(前回州知事選挙の投票総数の12%)が少ないことで同州ではリコール手続きが驚くほど容易になり、特定の利害関係者にしばしば乱用されることとなった。

 そのため、これまで同州の知事がリコール投票にかけられた回数はなんと50回以上。ただし実際にリコールが成立したのは2003年のわずか1回だけだ。民主党のデービス知事がリコールされ、共和党候補だった俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が知事に選ばれたときだ。