だから、そういう「生々しい」女性政治家である野田が、党内有力者たちの万端の準備で迎えられ「初の女性総理候補」という神輿に担ぎ上げられるのではなく、4度目の正直とばかりに自力でようやく20人の推薦人をかき集めて総裁選に出たことを、私は心の底から尊敬している。高市早苗と女2人揃って日本の与党総裁選に出て、念願の出馬がこういう形で実現したことをファンとして祝福したい。背景や条件の違う女性政治家がそれぞれのスタンスで政治を語る総裁選がいまこの日本で実現されて、日本でも同じ党に属する女性政治家同士が意見を戦わせることができるくらいには女の層が厚くなっていると証明できたことに、私は万感の思いなのである。

生身を削って「多様性」を知る女性政治家を日本のフロントラインへ

 野田はかつて私も参加したインタビュー取材で、京都の飲食店で現在の夫と出会ったとき、「夫は郵政選挙の頃に小泉元総理と戦っている私を見て、女の人なのに頑張っているなとすごく気に入ってくれていたんです。ファンだったんですね」と語った。「私は26歳からこの仕事をしていて、他に何の取り柄もない女なんです。それまで子どもも育てていなかったし。せいぜいお酒が強いくらいで、おじさん化して、仕事で頑張ってきたというのが、私が世の中にかろうじて存在できている自信で。容姿も自信ないし。でも夫は私の仕事っぷりが好きだと言ってくれたので、じゃあこの人に自分を託そうかなと。今後も仕事を続ける上で、そこをやっぱり理解してくれる人と一緖になった方がいいって」

 仕事だけは一生懸命にしてきた。でも自分に自信などなかった。そんな自分をいいと言ってくれて、自分にない才能をいくつも持っている夫を尊敬している、と照れた。野田聖子の、心の奥の柔らかい場所を見せてもらった気がした一瞬だった。「尊敬があるから、学歴なんて大したことじゃない。私の母は東大信奉者だったけれど、学校はどこなのなんて聞かれると私が『西、京都のほう』なんてごまかしてね」と笑う彼女に、物語のある政治家だ、と、グッときた。