支持率が頭ひとつ抜けているのに
なぜ河野大臣は叩かれるのか
自民党の総裁選が大詰めを迎えている。
毎日新聞が9月26日に発表した選挙戦終盤の世論調査でも、河野太郎行政改革担当相が45%と最も支持率が高く、次いで高市早苗前総務相と岸田文雄前政調会長が並んで18%、野田聖子幹事長代行が7%となっており、河野氏は自民党支持層に絞った集計でも47%とトップとなっている。
一方で、最近では河野氏の考えや政策に批判的な記事が増え、AERA dot.は「河野太郎氏が総裁選票読みで伸び悩み決選投票へ」(9月27日)と報じるなど、先行きは不透明だ。
なぜここに来て「河野叩き」が増えたのだろうか。出る杭は打たれるので、それだけ河野氏が総理総裁の本命候補と認識されてきたことが一番だろう。どんなに批判のネタがあったとしても、もし当選の可能性が低い候補であれば、多くの人はそうした候補に見向きもしない。本格的に自民党総裁に手が届いてきたからこその批判であろうし、政治家への批判がメディアで行われることは民主政治では健全なことだ。
しかし、なぜ河野氏はこれほどまで世論の人気があるにもかかわらず、自民党内で批判的な声が大きくなるのであろうか。この理由を考えるときに、既存事業で成功を収めた大企業が新規事業に取り組むときの経営上の困難さと、同じメカニズムが働いているように見える。
既存の大企業は、大きな不確実性にさらされ、非連続な変革を求められることに弱い。アメリカや日本の多くの経営学研究が、既存組織はこれまでのやり方に沿って組織が効率化されるので、これまでとは異なる変化に弱いことを示している。また、既存組織の慢心や、組織的な慣性、成功体験に対する自信が変革を妨げるとしている。
レオナルド=バートンという学者は、既存組織の中核的な能力そのものが、変革期には中核的な硬直性になり、組織の変化を阻むということも指摘している。これらのことは、そもそもどんな組織でも非連続な変化には一定の抵抗勢力が存在することを示しており、抵抗する人々は自らが変革を妨げているという自覚はなく、組織が誤った方向に進むのを止めようとしている善意に基づく反対であると考えている。それは、過去の実績という強い根拠によって、これまでの延長線上の未来を描くことが妥当に思えるからだ。