人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版後、すぐに重版が決まり、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せるなど、話題になっています。

月55時間以上の残業で「心筋梗塞リスク」が上がる! 寿命を削ってまで働かない!Photo: Adobe Stock

 ストレスは、大きく分けて「心」のストレスと「体」のストレスの2種類が存在します。

 心は「敏感」なので精神的なストレスがたまると気分が落ち込んだり、眠れなくなったりして自覚しやすいのですが、体は「鈍感」です。なかなか症状という形では表れてきません。

 人間には原始時代から備えつけられている機能として、ライオンや象などから身を守るために危険を察知すると「ストレス」を感じます。その際にホルモンや自律神経の調節を司っている脳の視床下部が刺激されます。

 人間の自律神経である交感神経や副腎に作用し、体を活発にするホルモンの分泌が活性化されるのです。人の体は活動的な状態になるのですが、その状態が長く続くと活性化した分、血圧を上げる誘因にもなってしまいます。

 一時的な状態であればいいのですが、例えば職場にいる間中ずっと怖い上司が気になって緊張状態が続いたりすると、血圧が上がりやすくなるといわれています。

人生はマラソン。「疲れ」は寿命を縮める

 産業医をしていると長時間残業をしている社員さんと面談をする機会が頻繁にあるのですが、「長時間残業をしても苦ではない。むしろよくわからない決まりで残業時間を制限されるほうがストレスだ」という労働意欲の非常に高い社員さんに出会うことがあります。

 確かに仕事がうまくいっていて、自己肯定感も高まっている人にとっては問題意識を持ちづらいでしょう。しかし人生は50m走ではなく、42.195kmを走り切るマラソンです。20~30代はマラソンに例えれば序盤にすぎませんし、40代でやっと中盤です。この段階で速度を上げて飛ばしすぎてしまうと、当然後半でスタミナ切れを引き起こします。

 事実、50万人以上のデータをもとにした研究でも、月の残業時間が55時間を超えた人々は、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇したという結果が出ています(※1)

 月80~100時間の残業をしている人はさらにリスクを上昇させる可能性があるでしょう。